新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

日本人は基本的に異質

 1992年発表の本書は、「アンドロメダ病原体」などを紹介した才人マイクル・クライトンのミステリー。700ページ近い大作だが、テーマとなっているのは「日本の米国侵略」、もちろん架空戦記ではない。

 

 ベルリンの壁が崩れ、ソ連が崩壊、中国はまだ台頭していないころで、米国最大の脅威は日本の経済侵略だった。「わたし」ことロス警察のピーター・スミス警部補は、ロス最大の高層ビル「ナカモト・ビル」での殺人事件の捜査を担当し、日本通のベテラン刑事ジョン・コナー(どこかで聞いた名前・・・)から「日本人は基本的に異質」だと、数々の例を挙げて説明を受ける。

 

 コナーは、日本企業はダンゴウをし、米国企業を乗っ取り、ダンピングや裏金を撒いて貿易不均衡を作り出す。スパコンのクレイをフジツウがいかにキャッチアップしたかや、ソニー、ヒタチ、ホンダらの名前を挙げて侵略者のように言う。

 

        

 

 コナーの口を借りての主張は、今日対中国で日米が言っている話と酷似している。半導体の有力企業が買収されそうになり、議会がストップを掛けるのだが「日本の魔手」は議会の有力議員にも伸びていた。

 

 そんな中、日本の大手企業ナカモトのロス支社のパーティには、多くの著名人(トム・クルーズやマドンナの名前も!)が招かれていた。パーティ中に高級娼婦と思われる若い女の死体が出た。パーティから外れ、別室でレイプされ絞め殺されたらしい。

 

 ピーターは外国人交渉役としてナカモト支社の連中と交渉するのだが、彼らは非協力的。コナーの助けで一歩づつ捜査を進めるのが精一杯だ。現場を撮ったらしいビデオテープの存在が分かるのだが、それはすでにすり替えられた可能性もあった。

 

 ビデオの改ざんの有無をピーターが専門家の助けを借りて進めるところが、多少「科学的」なだけ。本質は「最初の経済安全保障ミステリー」ということですかね。