新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

「生きづらさ」を覚える人々

 2019年末、まだ「COVID-19」禍が始まる直前に発表された本書は、朝日新聞記者牧内昇平氏の政治分析。この年9月の参議院議員選挙で2議席獲得した<れいわ新選組>と、山本太郎代表に関するレポートである。

 

 筆者は本書で、非正規から抜け出せない人、貧困で大学を辞めざるを得ない学生、子供たちに十分食べさせられないシングルマザーなど、困窮している人たちの現状をレポートした後、山本代表の「生きててくれや!」の叫びに共鳴した多くの声を紹介している。

 

 多くの人達が「生きづらさ」を抱える現代日本、しかし既存政党は彼らに目を向けていない。彼らは、生活苦で自殺を考えた人たちに「生きててくれや」と涙ながらに語り掛ける一人の政治家に光を見出だした。5万円しかない貯金から1万円を<れいわ新選組>に寄付した人もいて、「れいわ現象」ともいうべきムーブメントを起こしたとある。

 

        

 

 選挙の結果、比例・個人合わせて220万票あまりを獲得、これは全体の4.5%以上にあたり同党は政党要件を満たした。2人の比例特別枠の障碍者コンビを国政に送れたものの、山本代表本人は落選している。

 

 歴史家によれば、近代の工業化社会で都市の労働者中心に相対的貧困が進んで不満が溜まった結果、

 

労働組合と議会が正常に機能したら民主主義国家に

イデオロギー的暴発が起きると共産主義国家に

・エリート軍人らポピュリストが台頭すると独裁国家

 

 なるらしい。今はかつての工業化よりずっと過激なGlobal & Digital化が進んでいる。しかし労働組合も議会も、困窮している人たちの味方ではない。では山本太郎は独裁者を目指すのか?

 

 巻末に、同党から立候補した安富東大教授のインタビューがある。教授は、

 

・山本は組織を作らないから、独裁者指向ではない。

・もし同党が政権を取ったりしたら官僚の叛乱が起きる。

・その後は本当のファシズムが始まる。

 

 という。ではこの政党は何なのか?単なるガス抜きアイテムなのかもしれないと感じてしまいましたね。