今日は110番の日。2020年発表の本書は、キャリア警察官僚出身のミステリー作家古野まほろの警察組織紹介。ミステリーでは、○○警部や××警視が出てきて捜査の指揮を執る。ある作品には「警部補ともなれば、勝手な越境捜査くらいはできる」とあったが、これはとんでもない話。また最近警察庁に出入りするようになって、名刺をもらって驚愕した。「え、こんな若いのに警視の上の警視正!」、さらに局長に会ったら警視正の2つ上の警視監だった。そこで改めて本書で、警察の階級を勉強しようと買ってきた。
階級は10段階、その上に階級ではなくポストとしての警視庁長官職がある。ノンキャリの場合は、巡査・巡査長・巡査部長・警部補・警部・警視と昇進していく。比率としては、巡査2割・巡査長1割・巡査部長3割・警部補3割・警部以上が1割となっている。警部までの昇進には試験があり、状況によって受験にも制限がある。
警部となれば管理ポストであり、管理業務を嫌い現場を愛する人は警部補で満足するという。ノンキャリにとっては警視は究極のポスト、平均年齢は50歳超とある。クロフツの名探偵フレンチ警部も、警視に昇進するには相当な年月をかけていた。エラリーの父クイーン警視は、何歳だったのだろうか?
これも、一握りのキャリアになると事情は全く違う。筆者は入庁4年で警視になったという。昇進が遅くなった今でも、キャリア組は警部補からスタート、警部は霞ヶ関では係長クラス、以降警視・警視正・警視長・警視監と昇進し、警視総監を目指す。
「相棒」の杉下警部はキャリアだから、あの年齢なら警視長クラスになっていても不思議はない。悪役の内村刑事部長は警視長、黒幕の小野田官房長が警視監、レギュラーの角田課長が警視、伊丹刑事は(万年)巡査部長である。
どの世界にも階級はあるもの。大きな(実力)組織を束ねるには、秩序が重要ですね。でも、格差社会には違いないでしょう。