新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

雌鶏が鳴き叫べば、家が滅ぶ

 昨年も一杯ミサイルを撃ってくれた北朝鮮。国内経済は瀕死の状態のはずなのに、独裁者金正恩の暴挙は止む気配がない。加えて妹金与正の言葉も激しくなってきている。かつて平昌五輪の時に兄と一緒に現地を訪問し、柔和な印象を与えた彼女とは人が替わったかのようだ。

 

 2021年発表の本書は、朝日新聞社でソウル支局長も経験した記者牧野愛博氏の「金一族研究」。日本より男尊女卑の風習が強い朝鮮半島、その伝統は今も色濃く残っている。ことわざに「雌鶏が鳴き叫べば、家が滅ぶ」というものがあり、女性は家(国)のありように口を挟べきではないとの警句である。

 

        

 

 金正日には正妻金英淑との間に2人の娘がいるが、名前も知られていない。後に正日は成恵琳とねんごろなったが、父親金日成は結婚を認めなかった。しかし長男正男が産まれると、狂喜したという。ここまでは祖父が認めた子供たちだ。その後成恵琳が遠ざけられ、高英姫が3人の子供を産んだ。正哲、正恩、与正であるが、彼らのことは祖父は認識していないとある。

 

 正日は末っ子の与正が最も知性があり、統治能力も高いと評価していたが、残念なことに女の子だった。この3人には共通の問題があって、それは「三代目」ゆえに庶民の実情が分からないということ。欧州に留学経験があり、米国文化のエンタメも大好き。欧米にような国にしたくて、タワマンだスキー場だと現場に無理を押し付ける。それゆえ「赤い貴族」としての中央に向けて、胡麻化しや賄賂が横行することになる。ノルマは果たせないが、見逃してもらう代わりの上納というわけ。

 

 与正の地位については降格などあり揺れているが、結局は正恩に何かあった時のスペアだとある。一時期140kgあった体重、糖尿病、心疾患などが問題視されているのだ。万一の時は「雌鶏」でも構わないということだろう。

 

 昨年正恩の娘「尊いお子様」がメディアに公開された。彼女もスペアの候補かもしれませんが雌鶏です。家は続けられるのでしょうか?