新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

本当の「霞ヶ関改革」とは?

 昨日紹介した「官邸は今日も間違える」が面白かったので、著者千正康裕氏のデビュー作(!)を探してみた。著者が2019年に厚労省を退官して、翌年に出版したものである。法律改正の担当だったり、関連して国会質問の対応などしていると、帯にあるように「7時出勤、27時過ぎに退勤」という過酷な毎日になってしまう。

 

 ブラック企業そのものであり、職員の3割が休職もしくはその予備軍。人員不足の現場は、増々悲惨なことになる。筆者が退官した後、厚労省現業部門は「COVID-19禍」によってさらに過酷な状況になっていく。人(国)のために役に立ちたいとして公務員を指向し勉学してキャリア採用されても、現場を経験する時代に疲弊して退官してしまうという。

 

        

 

 そもそも良い政策を作るには、3つのプロセスが必要だとある。

 

1)詳しい人が徹底的に考える

2)出来るだけ多くの意見を聞く

3)決めた後の執行のことを良く考える

 

 いわゆる官僚主導の時代には、1)と3)に主眼が置かれ、2)が軽視されてきた。さらに官邸主導になると、3)も置いてゆかれる(できませんという官僚は抵抗勢力と断じられる)ことになる。政治家も専門性は低いので、1)の詳しい人というのも民間の有識者を十分吟味せず集めることになる。これでは良い政策は出来上がらないというのが筆者の主張。

 

 ではどうすればいいかというと、永田町・霞ヶ関を以下のように改革して、協力して良い政策を立案、執行できるようにすべきとある。

 

■永田町

 硬直した委員会等での質問/回答プロセスの改善、公務でない国会議員の仕事での公務員利用禁止、議員立法でも執行体制を考慮するなど議員(事務所)の能力向上、議論の場の効率性向上(オンライン利用、会議自体の整理)

 

霞ヶ関

 デジタルツール(ペーパレス・チャット、テレワーク等)活用、官僚の意識改革(効率性や利用者としての政策評価)、民間とのパートナーシップや外注拡大

 

 最後の点については、特に民間シンクタンク活用を提案したいですね。