新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

日本型州構想の(ちょっとだけ)具体策

 2019年発表の本書は、以前「この国のたたみかた」を紹介した中央大学名誉教授佐々木信夫氏の日本列島構造改革論。「この国・・・」同様、全国を10州に再編し、東京・大阪の2都市州を加えることで、130年前の「廃藩置県」に相当する「廃県置州」をなすとある。発表時期も同じで、出版社が違うだけかなと思ったが、少し具体策に踏み込んでいる。

 

 鉄道も満足になかった時代、行政の大きな単位は「県」とせざるを得なかった。しかし今は鉄道も高速道路も整備されていて、県境をまたいでの経済圏や生活圏が当たり前になっている。市民が自由に日常広域移動ができるのだから「国」の次の行政単位は「州」の大きさで十分。

 

        

 

 予算も多く(外交・国防・通貨くらいを守るためのものを除き)州政府の自主裁量に任せればいい。永田町や霞が関はスリム化できるのだ。州と基礎自治体の議会は、若者や女性比率をあらかじめ決めたクォーター制で選抜された議員に任せる。それも職業政治家ではなく、普通の市民が兼業できるようにし、議会も土日祝日や夜間に開催する。確かにこうすれば、下部組織に配るための裏金を用意する必要(*1)もあるまい。派閥も必要なくなり、政治改革は一気に進む。

 

 東京一極集中からの是正は、まず東京の機能を2割削減することから始める。政治機構・官僚機構は上記で達成できるだろうし、ロビー活動が必要な企業の組織も「州政府」の近くに移動するだろう。地方州政府の誘致政策に乗って、地方移転(特に大阪都)への移転も増えるだろう。

 

 前著同様、仰っていることに異論はありません。効果も十分期待できますしね。問題は、この構想を実現できそうな政党はどこかということです。官僚機構は抵抗するかもしれませんが、中には賛同し関連法整備などに尽力してくれる人たちはいると思いますから。

 

*1:根本問題は政党下部組織(前編) - Cyber NINJA、只今参上 (hatenablog.com)