新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

4人の素人探偵たち

 2002年発表の本書は、いくつも作品を紹介してきたポーラ・ゴズリングの、僕の本棚に残っている最後の1冊。最初シチュエーションの異なる作品を立て続けに発表してきた作者も、ある時点から五大湖沿岸の町ブラックウォーター・ベイと近くの街グランサムを舞台とするように落ち着いてきた。

 

 なかでもブラックウォーター・ベイのゲイブリエル保安官たちを主人公にしたものが多いのだが、本書は(この土地の)原点に返ってグランサムの大学や大病院で起きる事件を、ストライカー警部補と恋人のケイト・トレボーン助教授が追う。ケイトが教鞭をとるグランサム大学には、人類学部というものがあり、

 

文化人類学 人間の行動、ルール、道徳等を研究

・物証人類学 歴史上の人類の作品(壺・壁画等)を研究

・形質人類学 人類の骨格、疫病、死因、身体的特徴等を研究

 

 するのだという。物証人類学の研究者エリーズ・メイヒュー助教授が、自宅で射殺体で発見された。凶器はありふれた拳銃、指紋が拭き取られていたことから自殺のセンが消え、ストライカーチームが捜査に乗り出す。第一容疑者は行方不明の夫、行商人で家を空けることが多かったという。

 

        f:id:nicky-akira:20211220220415j:plain

 

 一方ストライカーの部下ピンスキー刑事のところには、娘(グランサム大の学生)の友人で医学生のリッキーから「不審な行動をとる人物を目撃した」と相談があった。問い詰めていくと「ちゃんとした証拠を得て」とリッキーは電話を切ってしまう。その後リッキーはインターン中のグランサム市立病院の近くで撲殺されてしまう。

 

 さらにケイトのところには、何者かの脅迫電話が相次ぐ。最近退学した学生の面倒を見ていたのを「不純異性交遊」だとなじってくるのだ。最初は取り合わなかった彼女だが、友人のリズに相談し、電話を録音するなどして相手を特定しようとする。

 

 リッキーの事件については、グランサム大のデイビッド・ワックスマン教授と市立病院のダン・ワックスマン医師の兄弟が独自の捜査を始める。以上3つの事件が中盤以降絡み合って、事件は4人の素人探偵が担当する様相に。本題ではないのだが、もう当時大学(院)の授業料が高騰していて、学費が賄えず退学する学生も多いという。これは今も変わっていない。

 

 警察小説のスタイルなのに、ストライカーチームの影が薄かったです。最後の1行には微笑まされましたが、ちょっと全体には期待外れ。さて本棚の作品は全部読みましたが・・・。