新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

田舎町の警官連続殺人事件

 1989年発表の本書は、一作ごとに作風を変えレギュラー主人公を持たなかったポーラ・ゴズリングが、初めて連続性ある作品としたもの。米国東部オハイオ州の田舎町グランサムを舞台にした第二作ということになる。前作「モンキー・パズル」では大学内の事件を解決し、その後結ばれたストライカー警部補と大学教授のケイトが、本書でも登場する。

 

 一緒に暮らしている二人(家事も分担し、ストライカーは仲間に冷やかされている)だが、結婚はまだ。今回の事件は、ケイトが学会(英文学でシェークスピアがテーマ)でイギリスに出かけ、有名なコットラル教授と意見を交わし、食事をしている間に急展開する。

 

 グランサム周辺に「警官殺し」が出現、すでに4人がライフルで狙撃されたり拳銃で至近距離から撃たれて殺された。いずれも頭部に1発、銃の腕だけではなく私服警官も犠牲になっていることからちゃんとした情報網を持っている敵のようだ。捜査に当たるのは、不屈のストライカー警部補のチーム。女房役の大男トスカレリ部長刑事、冴えない外観だが頼りになるピンスキー刑事、大学出たばかりのニールスン刑事。なんとなくエド・マクベインの「87分署もの」を彷彿とさせる。

 

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 犠牲者は4人だけではなく、FBIの潜入捜査官も撃たれて死んだという情報があり、犠牲者の同僚デイナ・マーチャント特別捜査官が派遣されてきた。30歳代半ばだが目を見張るようなセクシー美女だ。犯人は潜入捜査官の正体まで見破っているが、犠牲者5人に共通点は見あたらない。黒人も白人も、男も女も、ベテランも新人も、現場の刑事も裏方の技術者も・・・。しかしストライカーは、別件で捜査中の悪徳警官が犯人ではないかと考える。

 

 英国のケイトはデイナが美女だと(チームの刑事から)聞いて心配して電話をかけてくる。ストライカーは軽く受け流すのだが、なぜか彼自身にも銃口が向けられた。

 

 ストライカーとケイトのとぼけた会話は、スペンサーとスーザンのそれに似ている。チームの長だがハードボイルド風の一匹狼の面も持つストライカーは、なかなか魅力的なキャラクターだ。本書ではケイトの活躍はほとんどなかったが、その分刑事チームの活動が生々しく、迫力がある。

 

 難を言うなら、オハイオ州の田舎のイメージが湧かない事ですね。自然環境や土地柄の描写も少ないので。