新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

三原則は「行動・協調・秘密厳守」

 1984年発表の本書は、以前「パンプルムース氏のおすすめ料理」を紹介した、マイケル・ボンドのシリーズ第二作。作者は「くまのパディントン」で有名な児童文学家だが、パリのグルメ覆面調査員パンプルムース氏と愛犬ポムフリットが活躍するミステリーを20冊ほど遺した。

 

 パンプルムース氏は元パリ警視庁の刑事、やきもち焼きの妻ドーセットを何より怖れ、ガイドブック<ル・ギード>の編集長には頭のあがらない男だ。料理の評価には定評があると言うが、実は元警察犬のポムフリットにこっそり料理を食べさせてその反応を見ている。

 

 <ル・ギード>の編集長は、このところ悩みを抱えていた。叔母のルイーズが経営するホテル兼レストランが、経営破綻しそうなのだ。ロワール川沿いの風光明媚なところにあるのはいいのだが、料理がひどい。ステーキは焼き過ぎて靴底のようだし、パイはキツツキでも敬遠する固さ。当然「ゼロ星」である。

 

        

 

 <ル・ギード>で星を付けてくれと言われても、身内に甘い評価はできない。ベルナールという調査員を送ったところ、言動がおかしくなってしまった。どうも媚薬を食べさせられたらしい。そこで編集長は、パンプルムース氏にこのホテル・レストランを立て直すよう命じたのだ。それも秘密裏にだ。

 

 覆面調査員の三原則は「行動・協調・秘密厳守」、特に三番目は絶対守れと言明されて、パンプルムース氏と愛犬はロワール川を下る。早速試した料理は、全く歯の立たない代物。ただ長く保存されているワインの品ぞろえは素晴らしい。

 

 レストラン立て直しに悩む彼は、何者かに殴られたり、逆さづりにされたり、鼓笛隊の女性たちに襲われたりする。どうも何者かが警告をしているようだ。やはり媚薬を食べさせられてしまったポムフリットも暴走、一晩で13頭もの雌犬と交尾して村人に「逮捕」されてしまう。ちょっとピンクっぽい逸話をちりばめながら、「秘密厳守」の枷を嵌められ「ゼロ星レストラン」の再建を託されたパンプルムース氏の苦闘は続く。

 

 作者が書きたかったのは「大人の童話」でしょうね。グルメ&エロスということなら英国よりはフランス・・・という設定だと思います。それとも、英国人流のフランスを揶揄しようと言うことかもしれませんが。