新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

金正恩はスマホを使う

 今年になって再三のミサイル発射を続けている北朝鮮、ロシアのウクライナ侵攻で世界の目がそちらに向いているのが気に入らないらしい。せっかく米国バイデン大統領が極東にやってきたのに、韓国・日本を訪問しオーストラリア、インドとの首脳会談もしたのに、北朝鮮をスルーされたのも面白くない。だからミサイルを発射、核実験も再開するぞと息巻いている。

 

 しかし足元では物資・資金不足以上に「COVID-19」禍が大変そうだ。毎日10万人単位で「新規発熱者」が出ていて、非常態勢らしい。これが「新規感染者」でないのは、PCR検査がろくに行われておらず「COVID-19」感染による患者かどうかが分からないからだろう。そんな国の内情をレポートした書を何冊か紹介しているが、2018年発表の本書はフジTV報道センター室長の鴨下ひろみ氏の現地訪問レポート。庶民の生活と金一族の周辺を比較しながら、かの国の実情に迫ったものだ。

 

 前半、妻が複数いた金正日の子供たちの関係を中心に、金一族と親戚関係にある人たちに起きたことが書かれている。三男である正恩が跡目を継ぐにあたって、長男を殺し次男を幽閉したのは、叔父の張成沢らだが、結局張も粛清されている。

 

        

 

 いかにも冷徹な人物に見える正恩だが、スイスでエリート教育を受けたある意味の「常識人」。知悉している先進国と自国のギャップに悩み、先進国をまねた局所的な開発を指示している。平壌のある通りにはタワマンが林立し、大同江の船上レストランでは朝鮮の王宮料理が食べられる。整備されたスキー場には立派なホテルもある。

 

 正恩はこのような開発を通して「人民をいつくしむ為政者」を演じるだけではなく、本当にかの国を先進国並みにしたいと思っているのだ。しかし指示はしてもできないものはできない。そこで正恩は政府の幹部らを𠮟りつけるのだが、ある意味無理な注文をしていることになる。

 

 興味深かったのは、彼が台湾製スマホを愛用しているという記述。自国製はイマイチらしい。そんなことより、スマホなんか使っていていいのかと思った。プーチン先生は決してハイテクを使わない。位置の特定や盗聴などを恐れているからだ。

 

 本書にも6,000名を超す「サイバー部隊」がいるとあるが、彼らは防御には役に立たない。独裁者の場所はCIAが常時把握・・・なんてことになっていませんかね?