新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

地域の改革政党から中央へ

 2021年発表の本書は、ノンフィクション作家塩田潮氏の、日本維新の会を中心に据えた、この10年余りの政党離合集散史。断片的にしか知らなかった、改革政党「維新」の紆余曲折と、現状課題の理由を知ることができる。

 

 種々の問題はあれ、やはり政策を掲げて実行していけるのは自民党。地方組織である自民党大阪府連が「大阪維新の会」を立ち上げたのが、2010年。中心人物はともに府議だった政策力の浅田均と求心力の松井一郎。さらに、欠けていた発信力として金髪のタレント弁護士橋下徹を加えた。舌鋒鋭い橋下を口説いたのは、堺屋太一。小さな政府を指向する改革者である。

 

 東京と並びたてる大都市でありながら、大阪はガバナンス力に欠けていた。政治も無策で、経済が伸びない。タックスイーターが横行していた。浅田は中央集権ではできない(堺屋流*1の)改革は、地方政党ならできると考えて実践した。

 

        

 

 3人の協力があって議席が増え知事ポストも市長ポストも獲ったのだが、中央に進出するために合従連衡をすることになる。全国区の政治家である石原慎太郎と太陽の党を取り込んだ結果、例えば「脱原発」の路線は維持できなくなる。野党時代の自民党の安部元総理や菅元総務大臣とは昵懇になれたが、彼らは与党に復帰してしまう。

 

 そして二重行政打破の最終段階「大阪都構想」の住民投票は、2度にわたって僅差で成立せず、橋下・松井は政界を引退する。彼らが遺したものは、

 

・日本の統治機構改革への道筋

地域政党と国政政党の両立実績

・140万人が参加する住民投票の実施

 

 だったとある。最終章は、松井市長、吉村知事、馬場幹事長(現代表)、浅田議員のインタビュー。松井市長は「大阪府大阪市財政再建実績」を強調したが、浅田議員は「党の人員増に伴い体育会系の人が増えた。政策ができる人が少ない」と危機感を漏らす。堺屋先生が亡くなり、「党の頭脳」である浅田議員も70歳代半ば。実績は積めども次の政策突破力に不安があり、力業が目立つようになったのが頭打ちの原因かもしれません。

 

*1:二重行政打破、身を切る改革、行政の無駄排除、公共事業の民営化、民間経済活性化