新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

四方八方斬りまくり、でも一つの気付き

 2022年発表の本書は、気鋭の政治学白井聡氏と抗う新聞記者望月衣塑子氏の現代政治批判書。安倍元総理が亡くなった後の選挙で、立憲・共産連携がぎくしゃくし、両党が議席を減らし維新の会が台頭した後の政治情勢を分析したもの。基本的には、自民・公明・維新はもちろん、立憲・国民などの野党も断罪、褒めているのは共産党の一部とれいわだけである。

 

 WWⅡ後の占領体制に発する米国支配が80年近く続いた日本だとの主張で、戦後の民主化と言われたものは「単に天皇が国体だったスキームから、米国が国体になっただけ」と手厳しい。それを唯々諾々と受け入れてきた日本(国民)は、もう行きつくところ(本書の題名に言う解体)まで行かないと立ち直れないとある。

 

        

 

 原発事故も五輪招致も、カジノ・IRから万博まで、決定プロセスは決して国民主権ではなく国家主義そのものだという。もちろん統治しているのは米国。米国支配に逆らって来たのは唯一共産党だが、構成員の高齢化もあり衰退気味。

 

 国民、特に若い世代の政治への無知が著しく、主権を持っていることも忘れているといいたげだ。官僚機構、メディア、産業界、学界も糾弾していて、特に技術系の人は歴史や哲学を学ぼうともしない「理系バカ」で、

 

・社会性の未熟さ

・社会観の貧困さ

・精神年齢の幼さ

 

 があるとしている。ちょっと怒り!

 

 300ページすべてがこの論調で、自分たち以外は無能で無気力だという。左派系についても、真の左派ではなく「左派利権」で喰っている人も少なくないとある。高名なジャーナリストの実名が挙がっていた。

 

 ひとつだけ興味を惹いたのは「利権とメディアの癒着」の章。左派系メディアはカネが集まらない。小口寄付とボランティアが中心だが、メディアの中には利権と結びついて「経営」しているところがあるという。あくまで示唆だが、政党交付金など使い道の見えない資金がこれらに流れているといいたげだ。

 

 なるほど、自民党裏金疑惑が晴れないのは、一部メディアにも流れていたということでしょうか?いかにも、ありそうなことではあります。