新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

海賊の宝物を探す夏休み

 1989年発表の本書は、昨年「富豪の災難」を紹介したシャーロット・マクラウドの「セーラ&マックスもの」の第9作。とはいえ、セーラたちはほとんど登場せず、あまたあるケリング一族の中でも元気な60歳代のエマおばさんが大活躍する。

 

 消防訓練で3階から飛び降りる役を、ビクビクしながら務めたエマ伯母さん。ボストン沖のポカパック島の所有者サビーン夫人から、その島での夏休みホステス役を押し付けられてしまう。近いけれどフェリーでしか行けない島で、サビーン夫人は毎年何人かのゲストを招いて暮らすのだが、今年は体調が思わしくなかったのだ。

 

 エマさんは余興の芝居道具としてイミテーションの宝石などが詰まった黒い鞄を持たされて、フェリーに乗った。その島には海賊が残したという宝物があるとの伝説があり、今回のゲストたちは宝探しがメインの目的で集まっていた。

 

        

 

 超能力者のファス夫人が隠し場所を透視し、歴史学者が採掘計画を立て、ミステリー作家が採掘課程を文字に残し、イラストレーターが挿画やほんの表紙を描くという算段だ。すでにフェリーに乗った段階でエマさんは眠り薬を飲まされ、黒い鞄を盗られてしまう。鞄はゲストのひとりラドノフ伯爵が見つけてくれたのだが、島での暮らしが始まると不思議なことが頻発する。

 

 ウェットスーツを着た不審な男が現れるが、何も言わないうちに崖の下で死体となっていた。エマさんはマックスに救援を求めるが、マックスは事故で複雑骨折し寝たきり。セーラも看病で家を離れられず、従姉妹の占い師シオニアが島に向かう。主役はエマさんなのだが、このシオニアがクール。ケリング一族に入ってきたジプシー出身の女で、なかなかの推理力がある。

 

 冒頭では年齢を気にしていたエマさんが、眠らされたり頭を殴られたりしているうちにはつらつとしてきます。買ってあるこのシリーズは、これで終了。長く楽しませてくれたセーラ&マックスに乾杯です。