1991年発表の本書は、セーラ・ケリングものをいくつも紹介したシャーロット・マクラウドが他の12人の作家に声をかけて、クリスマスに関わる短編を書き下ろしてもらいアンソロジーとしたもの。
英米の作家ばかりだが、おおむね自らのホームグラウンドを舞台に、レギュラー探偵を持つ作家はその人を登場させて各編をまとめている。それゆえ、アイルランドからノースカロライナまで、主として大西洋を囲むエリアでのクリスマスから新年の様相が背景になっている。
新年といったのは、日本人には意外かもしれないが、クリスマスの本番は新年6日まで続くのだ。イエスの誕生日が12/25、1/6は東方三賢人がイエスに祝福を与えた日らしく、子供たちが最大のプレゼントを貰えるのは1/6と聞いた。
各地のクリスマスの過ごし方は、礼拝・寄付・家族が集まり・・・などは共通としても、料理などはずいぶん違うのが分かる。グローバル化以前の英米の街がそこに感じられる。贋札・詐欺・妻殺し・保険金詐欺など、犯罪ネタは全部違う。加えて、作家たちの中には最近お目にかからない人や全く知らない人もいて、懐かしさを感じたり、探してみようかという気にさせる。例えば、
◆何作も紹介した作家(カッコ内はレギュラー探偵)
シャーロット・マクラウド(シャンディ教授、セーラ&マックス)
イーヴリン・E・スミス(ミス・メルヴィル)
マーガレット・マロン(デボラ・ノット判事)
◇最近お目にかからない作家
パトリシア・モイーズ
○全く知らない作家
エリザベス・ピーターズ
メードラ・セール
ジョン・マルコム
ドロシー・キャネル
ビル・クライダー
エリック・ライト
ミッキー・フリードマン
ロバート・バーナード
知らない作家の中では、同名の女探偵リズ・ピーターズものが面白そうだ。タフな男探偵は多いが、彼女はタフな女私立探偵である。エリック・ライトの犯罪ストーリーも軽妙で面白かった。ミッキー・フリードマンの名探偵、ニックの解決も鮮やか。ビル・クライダーの表題作「サンタクロースにご用心」は、珍しくテキサス州が舞台。ここはやはり独特で、クリスマスキャロルの代わりに<Hawaii-5O>の主題歌が流れる。
まだ僕の知らないミステリー作家がいっぱいいますね。名前を憶えておいて、探すことにします。