新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

ケネディ兄弟末弟の危機

 1977年発表の本書は、以前デビュー作「百万ドルを取り返せ」を紹介した、ジェフリー・アーチャーの第二作。ややコミカル(&アイロニカル)だった前作にくらべ、「ジャッカルの日」なみのシリアスなスリラーである。

 

 米国第40代大統領に、ケネディ兄弟の末弟エドワード・M・ケネディが就任した。熾烈な大統領選挙の末で、得票差は1%も無かった。亡きJFK、RFKの遺志を継ぎ、新大統領は希望を胸にホワイトハウスに収まる。

 

 しかし、彼を暗殺しようとする動きがあった。FBIワシントン支部の若手捜査官マークは、銃創のあるギリシア人を病院で尋問し、彼がウェイターをしていて漏れ聞いたケネディ暗殺計画の断片を聞き出す。何人かの外国人と首謀者、それに誰か上院議員が加わっていたらしい。

 

        

 

 ところが、それを察知した陰謀チームは、病院に潜入して目撃者を消し、FBIワシントン支局長とマークの同僚も車ごとポトマック川に落として殺した。支局長はマークに間違われて殺されたのかもしれない。マークは直接FBIのタイスン長官に報告し、特命を受ける。

 

 暗殺実行チームは4人、元FBIの男がFBIの動静を見張り、イタリア人の運転手、ベトナム人の狙撃手とドイツ人がいた。ただドイツ人はFBI支局長の車を川に落とすと同時に自分も沈んで死んだ。暗殺期日には、議会前で車を降りた大統領が徒歩で議会入りをする瞬間に、狙撃手が奇想天外な場所から撃つ計画だ。

 

 暗殺の動機は、大統領が全力を傾ける銃規制法案にあるらしい。都市部の議員は危険な銃の規制に賛成だが、郡部では銃がないことの方が危険だと地方の議員は言う。しかし賛成派が優勢で、規制反対派が最後の手段に出ようとしている。

 

 マークらが「容疑者」の上院議員を徐々に絞り込んでゆく過程が面白かったです。ひとり、またひとりと容疑が晴れるのですが、暗殺期日までに特定できるのか?EMKは兄たちと並んで殺されてしまうのか?秀逸なサスペンスでした。