新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

シカゴは夏も半端じゃない

 以前サラ・パレツキーのV・I・ウォーショスキー(通称ヴィク)ものを3冊紹介した。第三作の「センチメンタル・シカゴ」は極寒のシカゴの街が舞台だった。五大湖のほとり、ちょっと行けばそこはカナダという土地柄寒いのは予想が付く。しかし第四作の本書(1987年発表)では、酷暑が主人公たちを襲う。

 

 医師の友人シャーロット(通称ロティ)のところの看護婦に16歳の娘がいて、彼女に職の定まらないチンピラがついているのをなんとかしてくれと頼まれたヴィクは、男を工場の就職面接に連れて行った。娘も付いてきたが、妊娠していて急に産気づく。ロティの病院は遠すぎて、近くの病院に担ぎ込んだ。ロティの仲間の医師マルカムがいてくれて処置をしたのだが、早産・母体の基礎疾患があって母子ともに助からなかった。

 

 チンピラは口止め料の5,000ドルをもらって姿を消したのだが、数日後ロティの診療室で代診を務めていたマルカムが暴徒に殴り殺される事件が起きる。捜査を始めたヴィクの前に、「中絶反対」を唱えるデモ隊が現れロティの病院を襲った。そこからヴィクは産婦人科学会の深い闇に引きずり込まれる。

 

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 診療所を襲った集団の弁護に当たるのは、ヴィクの別れた夫リチャード。病院の闇では地元のヤクザの影がちらつき、ついにヴィクの事務所兼自宅に空き巣までやってくる。手荒な連中で、同じ建屋に住むヴィクの知り合いの老人を殴って半死半生にさせもした。一方で当該病院の産婦人科医長は思わせぶりなしぐさでヴィクに近寄ってくる。

 

 とにかく、人種のごった煮のような街である。ロティはオーストリア人、両親はナチスの迫害をまぬかれるため米国に来た。ヴィクはポーランドとイタリアの混血、殺されたマルカムと担当刑事は黒人、ヤクザとチンピラそれに死んだ娘はヒスパニックだ。白人は総じて大通りの綺麗なマンションに住み、それ以外は裏通りの汚物にまみれエレベーターも動かないところに住む。

 

 ただ人種によって職業などはかなり偏っている。終盤に産婦人科学会の会合があるのだが、黒人は学会で犯人を捕まえようとする刑事だけだ。所得の格差もひどい。ヴィクの前夫は(悪党を守ることで有名で)時給が200ドルだという。同じ弁護士でもヴィクの10倍以上だ。このシリーズは米国の病んだ大都会を描いては、マクベインの「87分署もの」に匹敵すると思います。あと2冊買ってあるので楽しみです。