新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

He219A-5/R2「ウーフー」

 第二次世界大戦は、間違いなく「空の戦い」だった。陸戦・海戦を問わず、制空権なき側は必ず敗れた。また一般市民を巻き込んだ「戦略爆撃」という手法が、本格的にとられた闘いでもあった。第一次世界大戦では、ドイツの飛行船がイギリス本土を爆撃するなどしていたが、第二次世界大戦のそれはケタがいくつも違うほどの威力を示した。

 

 本書は英米戦略爆撃、特に夜間爆撃に対抗するために設計・生産・配備・編成・訓練されたルフトヴァッフェ夜間戦闘機隊の記録である。表紙の絵は、英空軍のアブロランカスター爆撃機を炎上させる新鋭夜間戦闘機「ウーフー」を描いている。

 

 夜の闇で相手を見つけ接近してこれを仕留めるには、電子兵器が重要な役割を持った。まともなレーダーを開発できなかった日本軍とは異なり、電子兵器で先端を行った英軍と、それを追った独軍の技術者の戦いでもあった。ドイツへの戦略爆撃の初期には、英空軍は爆撃機に随伴できる戦闘機を持たなかった。

 

 それゆえ防空戦闘機の出てこない夜間に爆撃機を単独で出撃させるようにしたのが、夜間爆撃の始まり。これに対して独軍は初期のレーダーで敵機を探知、サーチライトや照明弾で「見える化」して、戦闘機や高射砲で迎え撃った。

 

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 最初は昼間戦闘機を転用していたのだが、夜間の航法の難しさや攻撃力の強さから単発単座機(Bf109など)ではなく、双発複座のBf110などが役に立った。運動性の低いBf110も爆撃機相手なら十分俊敏だし、機種に機銃を集中配備できるのが大きい。

 

 その後戦闘機にもレーダーを積むようになり、ついに夜間専用の戦闘機を開発配備する。それが「ウーフー」だった。

 

◆ハインケルHe219A-5/R2

 ・全幅18.5m、全長17m、自重9,900kg、全備重量13,150kg

 ・推進力1,800馬力✖2、最大速度630km/時、航続距離2,850km

 ・固定武装30mm機関砲✖2、20mm機銃✖4、レーダー装備、乗員2

 

 1943年6月に就役したのだが、生産数が少なくパイロットの質の低下もあってドイツの夜の空を守り切ることはできなかった。なんとなく昆虫を思わせる容姿ですが、コックピットのあたりは後の攻撃ヘリコプターに似ていなくもありませんね。