新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

三度映画化されたSFホラー

 リチャード・マシスンという作家の作品を、紹介するのは初めて。1953年から半世紀以上に渡って脚本・小説を書き続けた作家で、僕は短編「激突」をTVで見て出会った。

 

◆激突(1971年)

 ・監督 スティーヴン・スピルバーグ

 ・主演 デニス・ウィーバー(マクロード警部もので有名)

 

 田舎道でふと追い抜いた大型トレーラーに、執拗に追い掛け回されるセールスマンの話。恐るべき迫力で迫るトレーラー(あおり運転)だが、最後まで運転手は登場しない。

 

 スピルバーグの演出もさることながら、小説も読んでこの作家のサスペンスを産む術には敬服した。そこで、作者の初期の作品だが本書を買って読んだ。当時SF嫌いだった僕に「こんなSFもあるんだ」と気づかせてくれた書でもある。これまで3度映画化されていて、

 

◇地球最後の男(1964年)

 ・主演 ヴィンセント・プライス

◇地球最後の男・オメガマン(1971年)

 ・主演 チャールトン・ヘストン

◇I am Legend(2007年)

 ・主演 ウィル・スミス

 

 と、いずれもヒットしたという。時代設定は1976年、地球が正体不明の感染菌に侵され、多くの人が吸血鬼になってしまった町で、ネヴィルは一人人間として生き残った。

 

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 吸血鬼たちはネヴィルを狙うのだが、日光下では行動できない。夜間のうちは発電機や冷凍庫を備えた強固な家がネヴィルを守ってくれる。日が昇るとネヴィルは食料やガソリンなどの調達(商店は全部無人だから持ってくるだけ)をし、日陰で眠っている吸血鬼を見つけるとその心臓に木杭を打って殺す。

 

 夜ごと人間だったころは近所の友人だった男が「ネヴィル出てこい」とわめきまわり、孤閨を囲うネヴィルに吸血鬼の女があられもない姿を見せる。それでもネヴィルはウィスキーを傾けて夜を過ごし、起きだすと木杭を集める。

 

 そんな一人ぼっちの日々を送るうち、ネヴィルは専門家でもないのだが手に入れた顕微鏡や文献で吸血鬼菌の正体を探り始める。偶然迷い込んだ菌に侵されていない犬は死んでしまったが、ある日ネヴィルは日中歩いている女を見つける・・・。

 

 吸血鬼がなぜニンニクや十字架を嫌うかの解説もあり、とても面白いSFホラーだと最初の邦訳「地球最後の男」で知りました。でも今は原題の方がいいですね。最後のページでこの言葉のインパクトが強かったですし。