新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

新事業創出のための練習問題集

 現役時代、僕が一番長く従事したのは「新事業創出」だった。デジタル技術を使ったものに限定されていたが、今の「Global & Digital」の流れの中で多くのイノベーションを目の当たりにした。本書は「VISITS Technologies」の創業者松本勝氏が、破壊的なイノベーションを起こしたいと思っている人のために、考え方を示し練習問題もふんだんに収めた実践的なイノベーション論。

 

 2021年に発表されたもので、実はある業界団体から贈られた書だ。「失われた30年」と揶揄される日本産業界に「喝」を入れようと、その団体が関係者に配布している。まずイノベーションとは何かをシューペンターを引用して定義し、やり方として

 

・デザイン思考

・統合思考

・転換思考

 

 を紹介している。実践例としてオンラインサービスの設計法を示し、巻末に付録としてグループワーク用の練習問題、

 

・新しいウェアラブル製品を創る

・オフィスでの新しい働き方を考える

・新しい移動体験を創る

・新しいバーティカルSNSを創る

 

 が用意されている。

 

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 筆者は本書執筆の動機を「誰もが創造的で幸せな人生を送ってほしいから」としている。ただ日本では昨今、それが出来ていなかったからというのも真実。その原因を筆者は、学校教育だとしている。日本の教育は、正解がある問題を与えられて、いかに早くその正解にたどりつくかを教えてきたからだという。

 

 ニーズとソリューションの2軸で、各々が従属的か創造的かで4象限を作る。いずれも従属的な象限の人は、課題と解決法が与えられると実行できる。これではイノベーションは生まれない。創造的なソリューションを考えられるようになると、与えられた課題を自らの力で解決できる。しかしこれではまだ不満。やはり、ニーズも創造的に考えられるようになって、自ら取り組むべき課題を見つけ解決できないといけない。そのような人物は、AI時代になっても活躍の場が得られて、幸せな人生を送れるだろうというわけ。

 

 何よりも価値があるのは、ニーズの深堀りと日常生活の中での意識だと筆者は言う。確かにイノベーション(新事業創出)のタネは常に身近なところにあるから、早く気付いたものが圧倒的に有利です。競争に勝つ以前に「オンリーワン」になれる可能性もありますしね。あ、公取に追いかけられるかな?