新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

政治家じゃなくてもできる

 驚いたことに、本書は2022年(今年!)の1月に出版されたもの。それが、もうBOOKOFFの100円コーナーに並んでいた。古書の外見しか見ないという同社の方針によれば、100円コーナーには少々汚れたり、古ぼけたり、書き込み等があるものが並ぶのが常。それなのに本書はピカピカの装丁のまま。

 

 あり得る仮説は、同じ本が多く入荷したということ。買った本なら、2~3ヵ月で手放す人がそんなに多いとは思えない。ひょっとすると、誰かが意図的に(宣伝目的で)無償配布したのかもしれない。

 

 しかし内容は立派なものだ。筆者は慶應大学総合政策学部卒、NPO法人<フローレンス>を設立し、病気や障害を持つ子供の保育など従来目が行き届いていなかった福祉を切り開いてきた人だ。大学の専攻(ここは僕も良く知っている)の関係だろう、早くから市民運動に関わっている。冒頭2004年(筆者はまだ20歳代半ば)に、ある区の市民委員会に出席したエピソードが語られている。

 

        

 

 区の保育に関する会合で、区の職員からは、保育所の増設・学童保育の充実などが報告されていたがその中に、人気アニメの着ぐるみが登場するイベントがあった。予算は800万円。区民に子育ての楽しさを理解してもらうという目的だが、一過性のショーにすぎない。筆者は「これは明らかにおかしい」と発言して、会議を緊張させた。

 

 担当者は「大勢の市民が集まる人気のイベント」と釈明したが、その結果子供が増えたり困っている子供(&親)が楽になったということではない。僕も似たような経験を何度もしている。イベントの集客やアクセス数を行政は報告するが、これはアウトプットにすぎない。イベントが目的とした事業のプロモーションに役立ち事業数が増えるアウトカムが要るのだ。

 

 冷たい視線を受けた筆者だが、行政内で理解を示す声も出て、このイベントはなくなり、彼が求めていた「病気の子供の保育」が一歩一歩進んでいくことになる。彼と仲間たちの声は、自民党の重鎮や都知事にまで伝わり、

 

・小規模保育施設

・病気や障害を持った子供の保育園

 

 などが認可されるようになる。僕に縁の薄い分野の活動だが、やり方は「デジタル政策の打ち込み」と同じ。筆者は、僕よりずっと若くしてこの世界を知ったことが大きいです。この分野長く経験すれば、政治家でなくても政策が撃ちこめるのです。筆者たちの今後に、期待してますよ。