2020年発表の本書は、国際ジャーナリスト山田敏弘氏が、引退したスパイらにインタビューしてまとめた「インテリジェンス教本」。題名はセンセーショナルに付けてあるが、サイバー空間を含めて日本のインテリジェンス能力やリテラシー向上の方向性を示したものだ。無論正体は明かせない元MI6のスパイの言葉を並べるだけで、本書の価値はわかる。
・CIAは予算も要員も多く、テクノロジー依存度が高い。人命軽視の傾向あり
・MI6は規模では劣るが、人や感性を重視して、より穏やか
・日本が対外インテリジェンス組織を持つなら、MI6が参考になろう
・MI6は、全てを疑い信用しない「ゼロトラスト」の考え方を共有している
・ごく限られた者しか信用しないのが、英国の伝統
・家族も信じないし、スパイは結婚することも恋人を持つことも難しい
・米国に次ぐスパイ大国はロシア、ロシアを理解する3つのポイントがある
・伝統的な利害、プーチンの考え(民主主義嫌い)、プーチンの側近の面子
・プーチンのスパイ警戒は半端でない。自分の周りのGPSを誤作動させるほど
・モサドもテクノロジー重視で、侮れない組織。そのモットーは聖書の1節
・賢明な方向性なくば人は倒れる。助言者たちがいれば、そこには安全がある
・決して防衛体制に入るな。攻撃が最大の防御、何か起きる(起こされる)前に潰せ
・中国はサイバーインテリジェンス能力で世界トップクラス
・サイバーツール作りはロシアが秀でていたが、中国が抜き去っている
・CIAとMI6は良好な関係にあるが、お互い3割くらいしか情報共有していない
・対象が決まれば、MI6はどんな相手でもハッキングできる
・世界の諜報機関が狙うのは、ウェアラブル端末のデータ、例えば健康情報だ
・7Payがリリース早々攻撃されたのは、キャッシュレス決済を主導したい中国の仕業
・問題を解決するには時間が必要、スパイには忍耐力(待つこと)が必要
・映画に出てくるより凄いツールも実用化されている(スティングレイなど)
・自分の活動に邪魔だとしても、国内の政治家のスキャンダルリークなどはしない
・最近MI6の長が一般向け講演を行うこともあるが、その内容すらデタラメ
言葉の端々にも重みがあります。こういう連中と関わり合って行かないとサイバー空間の安全性も守れないようですね。はぁ~。