新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

戦後日本最大の危機

 サイバーセキュリティ業界では、最近「最悪の事態を考えたリスク管理」の議論をしている。10月末にNHKBSで放送された「カトリーナは人災」のドキュメンタリーは、大変参考になった。さらに今回は戦後日本最大の危機といえる、東日本大震災とそれに伴う福島第一原発事故、その時の総理大臣だった菅直人議員のお話を聞く機会があった。その時配られたのが本書(2012年発表)である。

 

 日本の原発は「絶対安全」と言われ、筆者もそれを信じていた。しかし未曾有の震災を受けても大丈夫だった原子炉も、津波を浴びて全電源を喪失し暴走を始める。想定していなかった事態ゆえ、筆者を含めて官邸は深い憂慮に沈む。専門家を頼ろうとしても、

 

経産省の責任者は東大経済卒、原子力リテラシーがない

原子力安全保安院からは何の提案もない

・東電TOP2人は東京を離れていて、捕まらない

 

        

 

 なので、筆者は個別に専門家(大前研一氏にも打診したとある)をあたり、原子力委員会の近藤委員長に「最悪のシナリオ」を書いてもらったが事故後2週間経っていた。そのシナリオでは、原発から250km圏内が危険になる。盛岡も横浜もその圏内だ。5,000万人の避難が必要になる。

 

 そんな中東電幹部は、現地(F1の2号機)が制御不能なので作業員を撤退させたいと言ってきた。東電等の職員の命は重要だが、誰もいなくなれば「最悪のシナリオ」が現実になってしまう。筆者は総理としてその権利(と法律の裏付け)がないことを承知しながら、撤退を禁じた。現地指揮官の吉田所長は責任感溢れる人で、直接コンタクトできた時「初めて話の出来る東電の人に会えた」と感じたとある。

 

 自衛隊等の献身的な努力もあり、米軍その他国際社会の支援やいくつもの幸運が重なって「最悪のシナリオ」は回避できた。巨大な危機に立ち向かった歴史、大変勉強になりましたよ。