新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

命を懸けた人たちの手記

 本書は光人社NF文庫に2015年に加わったものだが、元稿は雑誌「丸」に掲載されたもので、ほとんどを実際に操縦槓を握って命のやり取りをした人が執筆している。23編の記事の内、1編が対談、1編が編集部による「未完成機の特集」だが、取り上げられている戦闘機は、

 

・三式戦 1

・九六艦戦 1

零戦 6

二式水戦 1

・月光 4

紫電 1

紫電改 4

雷電 3

・烈風 1

 

 となっている。三式戦は大正3年に制式化された戦闘機で、日本海軍が初めて実戦で敵機を撃墜した殊勲機(当然複葉だったが)である。九六艦戦は旋回性能・操縦性に優れた戦闘機だったが、7.7mm機銃2門の武装は貧弱で、航続距離も短かった。これを刷新して、かつ航空母艦上での運用も可能としたのが零戦11型だった。弾数が少ないとはいえ20mmの炸裂弾の威力は絶大で、大型機も仕留めることができた。

 

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 ただ1,000馬力級のエンジンでは上昇力・加速力に課題があり、米軍が2,000馬力級のエンジンを積んだ戦闘機を出してくるようになると、苦戦を強いられた。もう一つの欠点は通信設備で、まともに動かないうえに重いのでベテラン搭乗員は無線通信機を積むのを拒否したという。これでは共同しての空戦が難しい。

 

 2,000馬力級戦闘機以上に脅威になったのが、重装甲の爆撃機。12.7mmの防御火力が凄まじい上に滅多の事では火を噴かない。これが夜間に航空基地を狙って爆撃しに来るので、これを防ぐために局地戦闘機の開発が求められた。

 

 とはいえ、前線では今日にも対応機種が欲しい。そこで二式陸上偵察機に斜銃を積んで迎撃にあたらせた。これが月光である。重武装爆撃機にも後方下部に死角があり、ここに潜り込んで並走しながら機銃を打ち上げるわけだ。

 

 ただ敵爆撃機は続々やってきて、ついには都市に対して戦略爆撃も始めた。これに対抗したのが、航続距離は短くても重火力・高速の局地戦闘機雷電紫電紫電改である。

 

 面白かったのは試作のみに終わり実戦参加のなかった次期艦上戦闘機烈風にテストパイロットとして乗った小福田少佐の1編。烈風は、プロペラの付いていない写真しか残っておらず、飛んでいたとは知らなかった。あと、マリアナ沖海戦に旧式の零戦で闘った白浜飛曹長が、機銃の故障した機で8機のF6Fを引き付けた話は感動ものでしたよ。