以前「戦車対戦車」を紹介した、三野正洋の技術的な戦闘機比較論が本書。翼面荷重・馬力荷重・翼面馬力や、速度・旋回・防御の指数、さらに設計効果や生産効果まで指数化して、第一次世界大戦から第二次世界大戦、戦後のレシプロ戦闘機を100機種近く比較研究している。
翼面荷重とは、翼1平方メートルあたりの重量のこと。旋回指数は、1/翼面荷重✖馬力荷重・・・というようにすべてが数値で表される。ここに、「カッコいい」とか「力強い」などという感傷的な評価は出る幕がない。
本書のテーマは「空戦で強かったのはどの戦闘機か」ということだが、数値的に考慮できなかったのは搭乗員の練度と整備状況や補給(ガソリンの質など)の良否。通常の搭乗員と整備・補給だったらという前提での研究である。
第一次世界大戦の最優秀機は、スパッドS13(仏)で、ベスト5にはフランス機4機種、イギリス機1機種が入っている。リヒトフォーフェンの愛機として有名なフォッカー三葉は次点に甘んじている。第二次世界大戦については、「万能戦闘機」として比較した結果、
2位 Spitfire Mk9 英国の「魂」、火力・旋回力に優れる。
3位 零戦52型 最終改良型、エンジン出力が低すぎる。
4位 P-47 全備重量6トンの重戦闘機、爆撃能力も高い。
次点 P-51 爆撃機に随伴可能な長距離戦闘機。
という結果になった。本書ではこのほかに、対爆撃機迎撃用や、夜間戦闘用などについても分析してレーティングしている。主に単発単座のレシプロ戦闘機を取り上げているが、双発単座のP-38や、双発複座のP-61、Me110、Ju88、He219、屠龍、月光なども登場する。
筆者は第二次世界大戦前から途中で戦闘機関連技術が飛躍的に向上したとして、あくまで1940年時点での評価で、「零戦21型は究極の戦闘機」とほめている。長大な航続力と旋回能力に火力は大戦後期でも十分な性能を誇ったが、エンジン出力・防御力・強度が不足していた。ただ完成度が高すぎて、飛躍的な改良が難しかったとも述べている。
アバロンヒルに「Air Force」という空戦戦術級ゲームがあって、面倒な記録をとりながらしばらくやったものだが、それを思い出させてくれる書でした。