第二次世界大戦も後半、米国の巨大な工業力と技術力は続々と新鋭兵器を開発・配備させることができた。日本が結局持つことができなかった四発の戦略爆撃機B-17⇒B-29、空母艦隊に随伴可能な高速戦艦アイオワ級、対空火力を飛躍的に向上させる近接信管等々。
今や主力兵器となった航空機でも、強力なエンジンと高いオクタン価のガソリンによって高性能を発揮する機体が登場した。ミッドウェイ作戦と同時に行われたダッチハーバー攻撃で1機の零戦がほぼ無傷で鹵獲され、米軍はこれを徹底的に分析した。
その結果、極めて軽く旋回性能など運動性は高い一方、防弾設備はないに等しく「撃たれ弱い」ことが明確になった。同じような判断は、佐々木譲「ベルリン飛行指令」でも記されている。これはフィクションだが、イギリス上空の闘いに苦心しているヒトラーが、日本に長距離戦闘機があると聞いてそのライセンス生産を検討するからサンプルをよこせという設定になっている。上記のような理由で不採用になる結論だった。
前編で述べたように、ドイツの戦闘機(イギリスだって似たようなもの)は「バッタ」と呼ばれるくらい航続距離が短くイギリス上空に留まれる時間が短く制空権が奪えなかった。これがイギリス攻略戦「あしか作戦」ができなかった理由の大きなものである。
閑話休題、太平洋では航続距離の長い戦闘機がヨーロッパ戦線よりも必要である。双発のP-38に頼っていたこの分野にも、米軍は新兵器を開発して投入した。
◇チャンスボートコルセア F4U(海軍・海兵隊)
自重:4.0トン エンジン出力:2,000HP
最高速度:630km/h 航続距離:3400km
初飛行:1942/6
自重:3.9トン エンジン出力:2,100HP
最高速度:590km/h 航続距離:2880km
初飛行:1942/6
自重:3.1トン エンジン出力:1680HP
最高速度:690km/h 航続距離:2750km
初飛行:1941/10
日本も新鋭機を繰り出すが、仕様上は対抗できるものだったが工作精度やガソリンの質の不良で、十分な力を発揮できなかった。
◆中島 四式戦疾風(陸軍)
自重:2.7トン エンジン出力:2,000HP 最高速度:620km/h 航続距離:1400km 初飛行:1943/4
◆川西 紫電改(海軍)
自重:2.7トン エンジン出力:1830HP 最高速度:590km/h 航続距離:1700km 初飛行:1944/1
日米技術の闘い、これは現在も続いている。