2019年発表の本書は、経済学者野口悠紀雄教授の人生100年時代への提言。一時期「老後2,000万円問題」が大きく取り上げられていたが、日本の年金制度に問題が多いのは確かだ。筆者は「今のままでは年金の破綻は必至」という。だからといって、資産運用に頼るのは論外。どんな金融商品でも、必ず儲かるなどあり得ないし、仮にあったら売り切れているはずだから。
年金破綻は、就職氷河期世代だけの問題ではなく、全国民の問題。中年になって先の見えない非正規就労者がキレる事件が多いが、それは2040年には日常になってしまうからだ。ではどうすればいいのか?まず就労して保険料を納めてくれる人を増やすこと。
・家庭に縛り付けられている女性の環境を改善、就労してもらう
・技能実習生などの弥縫策でなく、積極的に移民を受け入れる
に加えて、高齢者自身も働ける限り働くべきだとある。
現在は高齢者が働くと得にならない制度がいくつかあって、政府はそれを改善すべきだとの提言だ。
1)在職老齢年金制度によって、就労収入によって年金が減額される
2)収入が増えると、医療費の自己負担が3割に上がってしまう
3)この「働くことによる罰則」は、介護の費用についても同じ
また高齢者とその予備軍に対しての提言は、
1)専門高度サービスのスキルを磨くこと
2)デジタル経済(シェアリング、AI活用、少額決済によるギグワーク)の利用
3)若いうちからのフリーランス指向
だとある。筆者自身、日本のタテ社会をヨコに動くことでフリーランス的に働いてきたとある。人生100年を図る時計を想定、健康さえあればいつまででも働けると考えておられたようだ。平均寿命がどんどん延びるので、1年歳をとっても平均余命も丸々1年減るわけではない。
僕も(筆者には及びませんが)ある大きな会社のタテ社会を、ヨコに動いて生きてきました。筆者の経済学は難しいですが、大きな意味はわかりますよ。