新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

コロナが炙りだした地方自治の課題

 <オミクロン株>が猛威を振るいだして、またTVニュースに感染症専門家や都道府県知事の顔が映るようになった。知事というのは不思議な役割で、地方自治の長かと思うとそうでもない。自治の主役は市町村で、政令指定市は独立なのだ。神奈川県など横浜市川崎市相模原市を除いてしまえば、ごく小さなものになってしまう。

 

 知事の指揮下には行政府はあるが場合によっては対立する議会もあり、上は国、下は(これにも議会がある)市町村に挟まれて、なかなか思うように自治行政ができないと聞く。そんな目立たない知事さんたちも「COVID-19」によって、表舞台に立つことができた。反面、失言などして批判を浴びることもあった。

 

 2020年発表の本書は、鳥取県知事や総務大臣を歴任した政治家(この人は決して政治屋ではない)、片山善博氏が知事の役割や資質、果ては地方行政の課題まで持論を述べたものだ。

 

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 「COVID-19」感染拡大の初期段階、実態が良く分からないせいで政府も混乱し、特措法を持ち出したり、一斉休校のような非常措置をとった。特に学校の休校は(夜の街閉鎖より)大きな社会的影響があり、これに各地の教育委員会が反発しなかったことは不思議だと筆者は言う。内閣が決め、知事がそのように実行したのだが、法的には各地の教育委員会が決める権限を持っていたはずだとある。

 

 褒めているのは、いち早く医療関係者へのPCR検査を(厚労省指示を無視して)拡大した、和歌山県の仁坂知事くらい。特にパフォーマンスが多かった知事への糾弾が厳しい。帯に出ている東京都と大阪府については、過去にさかのぼっての指摘がある。

 

◆東京都

 財政的に優位にあるが、鈴木俊一知事以降は「パフォーマンス知事」が、空虚な公約(その後守られない)や一つのイシュー(都市博廃止)で当選し、まっとうな都政にできなかった。その象徴が現在の知事。

 

大阪府

 二重行政打破を掲げた「大阪都構想」は理解できない。どこにでも二重(国も入れれば三重)行政はあり、「都」にしたからいいわけでもない。特に府知事と市長が同時に辞任して、交代するような選挙のやり方はアンフェア。

 

 加えて都道府県議会が、まともに機能していないとの指摘も厳しい。確かに市町村議会も含めて「政治」をしているようには見えない。中央・地方の政治現場を知り尽くした識者の指摘、十分重みがあります。