新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

是非ではなく事実として

 昨日「医の希望」を紹介して、人が健康で長く暮らせる(働ける)社会になったことを再確認した。僕も今月で67歳。60歳そこそこで亡くなった多くの先達のことを思うと、幸福な時代を生きてきたと感じる。

 

 本書は、平成という30年間の日本や世界の変化をデータで捉えた書。総じてみると昭和後期の経済発展の時代が終わり、近代日本が成熟期を迎えたこと、グローバル化が進み世界の格差が縮まる一方国内での格差が開いたことが特徴と言えるだろう。データについては視点によって脚色されうるが、本書では「是非ではなく厳然たる事実として」扱っている。実感として理解していることもあるが、いくつか実例を挙げよう。

 

        

 

1)在日外国人は2.5倍(約100万人⇒250万人)となった。うち、中国人は70万人を超えている。

2)日本人一人当たりのゴミの量は15%も減った。NOxやSOx排出量も減り、環境問題は改善しつつある。

3)貧困層の所得は、平成前半は伸びたものの、後半下降し結局伸びは無かった。(貧困線:所得中央値の半分)

4)エンゲル係数も、平成前半は下降したが後に伸び、26%と元のレベルに戻った。

5)平均寿命は以前から世界有数だったが、それに加えて平成期間に5歳以上伸びた。

6)年金・医療・介護・生活保護等に費用は2.7倍(約47兆円⇒120兆円)になったが、高齢化だけでなく医療の高度化も原因である。

7)消費支出で最も伸びたのは保健医療、他に交通・通信費も増加。

8)消費支出が最も減ったのは被服履物、他に教育も減っている。

9)世界各国市民が移動距離を増やす(平均1.8倍)中、日本人の移動距離は増えていない(1.1倍)。

 

 政策決定の手段として、EBPMという手法が重視されてきました。ここの取り上げたのはごく一部ですが、このような事実を市民に周知し、だから年金・税金・公共事業・国防等々はこうしますという説明を、政府には期待します。財務省主導だけじゃなくてね。