新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

パンデミック下の政治2020

 本書は2020年1年間の、各国の対応状況を政治指導者に焦点をあててまとめたもの。ベルギー在住のジャーナリスト栗田路子氏が、各国の日本人ライターに声をかけて、現地の生々しい状況をレポートしてもらっている。

 

 読んでみて、あらためて日本に入ってくる情報は断片的、場合によっては刹那的なものが多かったと思う。「コロナはただの風邪」とマスクも着けなかったトランプ先生の話や、トランプ先生同様自ら感染してしまいICUに送られたジョンソン首相のことは聞いていたが、被害の多寡だけでなく政治指導者のスタンスが社会をどう支えたかが本書を読むとよくわかる。

 

 栗田氏が住んでいるベルギーは、2020年1年間で人口100万人あたり1,555人の死者(以下同様)を出した。被害は突出しているが、危機対応にあたったソフィー・ウィルメス臨時首相は、国民に丁寧な説明を尽くして社会混乱を起こさせなかった。真摯な姿勢で危機を語り、ロックダウン等の対応も誠実さを見せて分かりやすく語ったという。

 

        

 

 同じようにドイツ(死者274人)のメルケル首相は「行動の自由を制約することは東ドイツ出身の自分としては断腸の思いだが、皆さんの命を守るためにやむを得ない」と市民に語り掛け「賢母の貫禄」を示したとある。

 

 スウェーデン(死者757人)のステファン・ロベーン首相は、不安定な政権基盤上で執務しており不信任決議をされるなど不人気な首相だった。しかしパンデミック発生後は格とした医学理論を持つ専門家を立て、その黒子となって危機を乗り越えた。

 

 ニュージーランド(死者5人)のジャシンダ・アーダーン首相も、「親切を心がけよう」とSNSも駆使して国民と対話を図り、長引くロックダウンでも不満を噴出させなかった。こういう優れた指導者がある一方、

 

◆フランス(死者892人)

 上から目線が目立つマクロン大統領に対しては、医療関係者が率先して反発。この数年間医療行政の費用を削ってきたのが、パンデミックの原因だと非難した。ロックダウンが遅れたのも、大統領が当初経済を優先させたためだとされている。

 

◆イギリス(死者964人)

 「政界の道化師」と呼ばれるジョンソン首相は、EU離脱などの難題と重なったとはいえ、対応は後手後手に回ったと非難された。救ってくれたのはエリザベス女王の真摯な演説だった。

 

 米国の話もありましたが、とりあげるまでもありませんね。