新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

トライポッド対巨砲戦艦

 2011年発表の本書は、大艦巨砲主義架空戦記作家横山信義の(めずらしい)SF。この年に亡くなった小松左京の「見知らぬ明日」に感銘を受けた作者は、自分なりの「見知らぬ・・・」を書きたいと思い、本書から始まる短いシリーズを書いた。

 

 ジュール・ヴェルヌの「宇宙戦争」はラジオドラマになり、映画化もされた古典だが、これをベースに作者の得意な艦隊砲撃戦を描こうとしたようだ。史実通り、真珠湾を奇襲するつもりで6隻の空母を発信した淵田中佐の攻撃隊だが、真珠湾はすでに破壊され尽くしていた。

 

 三本足の兵器トライポッド(大型・小型がある)と、空飛ぶエイのような戦闘機が跋扈し、太平洋艦隊は壊滅していたのだ。トライポッドは99艦爆の250kg爆弾の直撃を受けても傷つかず、エイは零戦の20mm機関砲では墜とせない。

 

        

 

 攻撃隊は100機あまりを失って空母に戻り、南雲提督は撤退を決断する。痛手を負ったのは米国だけではない、英国もドイツもソ連も、自国領を侵略されていた。ここに至り、日米開戦は白紙になり各国協力して外敵にあたることになる。

 

 英国情報部は、40年前に火星人の侵略を受けたことを告白、その時はウイルスが火星人を殺したのだが、トライポッドなどの兵器は太刀打ちできるものではなかったと告げる。しかし、希望は見えてきた。シンガポールに来寇した火星人に対し、英国東洋艦隊が反撃し、2隻の戦艦・巡洋戦艦を失いながら小型トライポッドを破壊したのだ。

 

 火星人の殺人光線は強力で、航空機も艦船も破壊されてしまうのだが、2万mほどしか射程がない。射程外から戦艦の砲弾や長距離魚雷を撃ち込み、運よく当たれば敵を破壊できるのだ。フィリピンを巡る戦闘では、帝国海軍の高速戦艦2隻が相討ちの形でトライポッドを仕留めた。

 

 うーん、架空戦記にSF手法はつきものですが、火星人のトライポッドと戦艦の戦いというのは意外でしたね。まあ、作者の「お遊び」と思っておきましょう。