新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

ハーレムの少女はなぜ狙われる

 2005年発表の本書は「どんでん返し職人」ジェフリー・ディーヴァーの<リンカーン・ライムもの>。面白くて、前作「魔術師」まで一気呵成に読んだのだが、新作が100円コーナーに並ぶのを待っているうちに、約2年経ってしまった。十分在庫が溜まったところで、読み始めたのが本書。

 

 首から上以外はわずかに左手薬指だけが動く天才鑑識官ライムと、その協力者でいまは恋人でもある赤毛の警官アメリア・サックスは、今回140年前の米国憲法修正14条制定に係る謎に挑む。

 

 まだ黒人が3/5市民だったころ、各州で黒人の権利がバラバラで憲法でそれを規制しようとした。各州での市民の権利の制限を勝手にさせない修正が成されたが、これで人種だけではなく宗教等も含む差別的な州法が禁止された。

 

        

 

 140年後、ハーレムで暮らす11年生(高校2年に相当)ジェニファーは、先祖がこの修正に関わっていたとの記事を閲覧していて、レイプパックを持った白人男に襲われる。なんとか逃れたジェニファーはライムらに匿われる。ライムはこの事件をレイプを隠れ蓑にした殺害未遂だと見抜いたが、ジェニファーは学校やバイトなど普通の生活をしたがる。さらにジェニファーの周りに黒人の怪しげな男も現れて、彼女は何度も危ない目に遭う。

 

 140年前の謎と共に、ジェニファーがなぜ再三命を狙われるかが分からない。しかも彼女の周りの全ての人間が秘密を抱えていて、彼女自身にも言えない秘密があり、ライムの捜査は妨げられる。微細な証拠を積み上げる捜査で殺し屋は特定できるのだが、この男の逃げ足も速い。追う警官も負傷させられる始末。しかも何人か仲間がいて、殺しを命じた真犯人は全く分からない。

 

 優秀だが強情な少女に戸惑いながら、ライムとサックスはついに殺し屋をワナにかけるのだが・・・。いつもながら後半はジェットコースター的展開を見せる本書、作者の筆はますます好調です。