新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

「無理ゲー」としての地域活性化

 2016年発表の本書は、ベテランジャーナリスト山田順氏が「地方創生の闇」を指摘したもの。僕自身20年近く(デジタル屋として)地域活性化には取り組んできたつもりだが、中央政府の「施策」では地域は元気にならないと感じていて、そのモヤモヤ感を吹き飛ばしてくれた書である。

 

 古くは竹下内閣の「ふるさと創生1億円」から、ゆるキャラふるさと納税・プレミアム商品券などの施策について「止めよう」という意見は出てこなかったとある。多くの識者が「無駄だな」と思っていても、地域活性化に竿差すことは誰にとっても難しい。それをいいことに、これらの施策に多額の税金が投入され、実質的に政府与党の選挙目当ての「バラマキ」となった。たとえば「ふるさと納税」だが、

 

・市場を歪め、特産品の価値を損なう。

・かえって地元産業が疲弊する。

・税収の変動に対応できない自治体も多い。

・仮に税収急増になっても、歳出も拡大し継続が難しい。

 

 から、天下の愚策だという。この制度を利用しない納税者にとっても、相対的に不利になることから被害が及ぶわけだ。確かに経済視点ではその通りだが、これを提案した菅(当時)総務大臣の頭には、選挙のことがあったのだろうと思う。

 

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 おカネの流れを政治力で無理に変えても、国にも地方自治体にもいいアイデアはない。結局のところ東京の、悪徳コンサルタント・デザイナー・イベント業者などを潤しただけで終わった。加えて筆者は、

 

ソーラーパネルは公害の原因でもあり、自然破壊の最たるもの。

・新幹線、リニアは地方を(ストロー現象によって)破壊する。

地方銀行の崩壊が(ゼロ金利などで)進んでいる。

・地方議員、公務員はいらない(か少なくとも収入を貰い過ぎ)。

 

 と指摘する。では地方創生のカギとは何か?ポイントは、

 

・成長しないことを前提とした、地域コミュニティを形成

・全部は生き残れないので、「創生」ではなく「消滅」の準備を

 

 ということらしい。地方ではエリートは都会に出ていくか、公務員・銀行員などになり、その他の人は「マイルドヤンキー」となって貧しい家庭を持つことになる。彼らはカネも能力もないので半径5km以内でしか暮らせないが、そこでもショッピングセンターが消滅するなど危機が迫っている。

 

 地方活性化は「無理ゲー」だと筆者は言っています。それは真実なのですが、さて・・・。