新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

新しい階層「クリエイティブ・クラス」

 昨日大前研一氏の「稼ぎ続ける力」を紹介したのだが、どんな仕事をするかは高齢者だけでなく若者にとっても重要。残された時間が長い分、より深刻なテーマである。本書は、大前氏より44歳若いメディアアーティスト落合陽一氏の現代仕事論。2016年に発表した「これからの世界をつくる仲間たちへ」をリライトして、新書版で2020年に再版したもの。

 

 AIの登場や国境の希薄化など "Global & Digital" の時代に、若者はどうやって生きていくかを示した内容だ。結論から言うと、クリエイティブ・クラスになるべきだということ。これは「機械では代替できない人材」のこと。従来型のホワイトカラーの、

 

・お得意先回り

・見積書作成

・クライアントの要望を現場に伝達

 

 のような仕事は人間がやらなくてもよくなってしまう。それを越えた専門家たるべしとの意味だ。

 

        

 

 経営層やそれを支える改善・創造・交渉等を担当する専門職は残るが、彼らと現場を繋いでいた(だけの)中間管理職は機械に置き換えられて行き、その人件費は経営者やスタッフ、さらに現場のブルーカラーに振り分けられてしまう。新しい中間管理層たる機械に克つため「気合を入れる」人がいるが、これはまるきりの勘違いだという。

 

 では、クリティテブ・クラスになるにはどうしたらいいか。知識(記憶力)やプログラミング能力、語学力はあってもいいが、必須ではない。データ検索も自動プログラミングも翻訳も、機械がやってくれるからだ。必要なのは「思考体力」だというのが筆者の主張。新しく問題を発見して解決への道を探るのは勉強だけ出来てもダメで、研究が出来ないといけない。その基本が「思考体力」だということ。

 

 コンピュータシステムはすでに人間と競うものではなく、地面(地球)のように人間が生きていくための基盤になっているとあります。うなずけることばかりですが、筆者なりの表現に、気付きが多かったです。意外だったのは彼も「工学系の研究者」だったということ。若者向けのメッセージですが、高齢者にも意味ある書でした。