新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

ハーバード成人発達研究の成果

 本書は、2023年6月に出版されたばかりの「幸福の研究書」。「人生の指針を示す書だ」と勧めてくれた人がいて、久しぶりに新刊書を買った。ハーバードの「成人発達研究」は、両大戦間にボストンで始まった。2つのグループの人を、世代を越えてトレースして、健康や仕事、お金や家庭環境などが異なる人たちを、現在に至るまで(およそ1世紀)トレースしている。スタート時のグループとは、

 

ハーバード大の2年生268人

都心部に暮らす少年(少女)456人

 

 で、当時すでに増えつつあった移民二世は前者で13%、後者では60%ほどだった。孫の世代までトレースすることで、被検者は1,300人を越えている。本書の執筆者ロバート・ウォールデンガーは臨床精神科医、マーク・シュルツはデータサイエンスに長けた心理学者。2人が、現時点での当該プロジェクトの責任者である。

 

        

 

 例えばある人が14歳から84歳までの70年間、家庭を持ち・職業を変え・幸福感をどう味わって来たか(味わえなかったか)などをアンケートし、集積して膨大なデータとしている。仮名で多くの被検者が文中に登場し、ナマの声も披露する。これは実験に裏付けられた「幸福の科学」と言えるだろう。

 

 帯にある「よい人生とは?」の答えは、良い人間関係を持つこと。一番小さな社会単位である家族(配偶者)との人間関係が良好なら、充実した毎日が送れて、健康も得られる。不慮な何かが無ければ、長寿も(レベルは様々だが)繁栄も手に入れられる。

 

 また、生き方を測るのに「注意と時間の配分」に注目しているのが面白い。どんなことに注意(という個人の資源)を払って、時間を使うのか?その結果幸福になるのか否かという問題設定だ。テクノロジー関連の警告もあった。

 

SNS等でコミュニケーションをした気分になってしまう

・テレワークは家庭と職場の境目を無くしてしまう

 

 結論としては、孤独は人生の「敵」だし、友達は何歳でも作れる。「幸せになるのに遅すぎることは無い」とのことでした。