2015年発表の本書(4冊組)は、クランシーの<ザ・キャンパス>ものをマーク・グリーニーが書き継いだもの。今年紹介した「米露開戦」「米朝開戦」「機密奪還」に次ぐ作品だ。今回の悪役は「米露」に続いてロシアのヴォローディン大統領。プーチン氏をほうふつとさせる人物で、ウクライナ侵攻を<サ・キャンパス>や米国ライアン大統領によって阻止されている。クリミアやドネツクは占領したものの、ロシア軍はそれ以上の侵攻は出来ず戦線は膠着状態。経済制裁も堪えてきて、ヴォローディンは3つの作戦を隠密裏に計画する。
1)ベラルーシからカリーニングラードへの回廊(リトアニア)侵攻
2)米国東海岸への核ミサイル原潜「クニャージ・オレグ」の派遣
3)自身の資産80億ドルを、シロビキらにも秘密のオフショア口座に移す
1)に先立ち、NATO軍の足並みを乱すため、リトアニアのLNG基地を破壊、各国のエネルギー関連の要人を暗殺、自国の軍用列車を襲わせる「偽旗作戦」も決行した。ライアン大統領はロシアのリトアニア侵攻が近いと考えNATO諸国に協力を呼びかけるが「実際に侵攻されないと動けない」という国が少なくない。
<ザ・キャンパス>は少なくなった要員のうちからシャベスとドリスコルをリトアニアに派遣、ロシア軍侵攻のための防衛作戦を始める。一方ジャック・ライアン・ジュニアは、ロシアからみの金融不正を追って恋人イザベルとローマに滞在していたが、何者かに襲撃される。どうやら3)の作戦に関わる何を嗅ぎつけてしまったようだ。英領ヴァージン諸島では、ヴォローディンの命を受けた工作員が3)のために、暗号通貨トレーダーの妻子を人質にしてマネーロンダリングを開始していた。
かつて特殊部隊<レインボー>を指揮していたジョン・クラークは、67歳の老骨(!)に鞭打って、たった一人でのカリブ海での作戦を開始する。
<続く>