新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

戦場を制したもの(1942)

 以前この前の巻「西方電撃戦」を紹介した、雑誌「丸」に掲載された記事を取りまとめたものの第二巻が本書。前巻同様、第二次世界大戦の19の戦車戦をつづったものだ。時期は1942年で、内訳は、

 

北アフリカの戦い 9

・ロシア南部の戦い 7

・ロシア北部の戦い 3

 

 となっている。1941年末の日米開戦により、米軍は連合国側に立って参戦したものの、まだ本格的に欧州戦線に展開できる兵力は派遣していない。航空部隊(B-17など爆撃機隊)や海上護衛艦隊くらいで、陸上部隊はドイツ軍を戦火を交えていない。ただソ連へのレンドリースや英国への供与で、戦車などは戦地に送られた。

 

 北アフリカ戦線では補給に苦しみ、戦力をやせ細らせながらもロンメル軍団の攻撃が続く。エジプトに侵攻して、スエズ運河にも近いエル・アラメインという小さな村までやってきた。まだ主力はⅢ号戦車(主砲50mm、表紙の写真)で、Ⅳ号戦車の数は多くない。それでも戦力的に劣るイギリス戦車は翻弄できた。しかしついにモントゴメリー将軍とM3グラント戦車がやってきて、ロンメルの前に立ちはだかった。

 

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 M3は戦時急造戦車で回転砲塔には37mm砲しかなく、75mm砲は胴体に直結し射界が狭い。不細工な大型戦車だが、ドイツ戦車を一撃で葬ることができた。これに対してドイツ軍もⅢ号、Ⅳ号の長砲身型を投入するのだが、いかんせん数が揃わない。約一年間のシーソーゲームの後、ロンメル北アフリカを追われることになる。

 

 一方のロシア戦線、こちらではソ連の戦車兵の練度が上がってきて、昨年のような惨敗はしなくなった。Ⅲ号、Ⅳ号より性能が高いT34が増産され、戦車の性能ではドイツ軍が劣っていた。ここにもⅢ号、Ⅳ号の長砲身型が配備されるようになって、ようやく優劣付けがたくなった。しかしここで3つの大きな敵がドイツ軍を襲う。

 

・ロシアの厳冬

・無尽蔵に湧いてくるソ連

ヒトラーの妄想

 

 戦死より凍死が多いと言われたほどの厳冬でドイツ戦車は動けなくなり、ロシアの湖は厚く氷が張って50トンを超えるソ連重戦車さえ湖を越えてくるほど。局地戦に勝利しても、いつの間にかソ連兵は補充される。勝ったしソ連軍はもういないと信じるヒトラーは、無理な攻勢を現場に求めた。

 

 加えてM3や新鋭のM4シャーマン戦車もロシア戦線には登場します。枢軸側有利の時代は終わろうとしていました。