新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

NATO加盟の議論の前の予習

 今日から始まるNATOの会議に、韓国の尹大統領とともに岸田総理が出席するという。もし日韓両国が加盟などということになったら、もはや「北大西洋」ではなく「北大洋」条約になって、NATO→NOTOになるかもしれない。

 

 2021年発表の本書は、以前「プーチン幻想」を紹介したウクライナ出身の国際政治学者グレンコ・アンドリー氏の近著。中露対西側の新冷戦が始まったとあるが、ロシアのウクライナ侵攻以降、すでに冷戦の領域を越え始めていると思う。NATOがあればこそ、欧州には70年余の平和があった。その意味で画期的な軍事同盟と評価できるNATOも、

 

        

 

ハンガリー動乱では、同時に起きたスエズ危機の影響で同国を救えなかった

・「プラハの春」にも直接介入はせず、見殺しに

 

 したという。バルト三国NATO加盟を果たしたので、これまでは平穏だ。そうでなければ見捨てられる。ただNATOの中にも問題児はいて、例えばハンガリーEUからの財政支援を受けながら、オルバーン首相はEU叩きのポピュリズムで政権を保っている。欧州各国のゴタゴタが続くのは、やはり平和ボケだからと筆者は言う。

 

 プーチンは策士で、東欧諸国はじめ各国に謀略をまき散らしている。その手段はインフルエンサーサイバー攻撃(筆者はすでにサイバー戦争と言っている)、要人買収などあらゆるものだ。

 

 さらに、中国のマネーが各国に必要なものになっている現状も問題だとある。結論として、中露に対抗するための西のフロンティアがウクライナで、東のそれは日本だというのが筆者の主張。両国がNATO入りすれば、世界平和がやってくるというわけ。

 

 筆者がウクライナの危機に際して、米国をはじめNATO諸国を巻き込み、あわよくば日本も・・・という意図は明白。ただそれを割り引いても、東欧諸国中心の歴史に関する考察は興味深かった。さて、この状況を踏まえて、日本はどうすべきでしょうかね。