新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

極右組織のホワイトハウス攻略

 1995年発表の本書は、以前「氷壁の死闘」を紹介した冒険作家ボブ・ラングレー晩年の作品。「氷壁・・・」が第二次欧州大戦を舞台にした山岳冒険小説だったように、作者は何らかの紛争を背景にした謀略小説が得意だ。

 

 本書では<ムーブメント>という極右組織が、ホワイトハウスを乗っ取ろうとする謀略を展開する。組織のボスであるサーケルド将軍は、ベトナム戦争の英雄。今は車椅子生活だが、堕落し衰退する(と彼が思っている)米国の現状を悲観し、自分が支配できる政治家を副大統領にしようとしている。思想的には、銃規制反対・LGBT大嫌い・小さな政府指向で、共和党支持者らしい。

 

        

 

 将軍の手先となって働く殺し屋ダニーは、ベトナム戦争で将軍の身代わりとなって死んだ伍長の息子。5歳の時に引き取り、実の子同様に将軍が育てたのだ。<ムーブメント>が目を付けたのはハックスリーという上院議員、血筋も押し出しもいいのだが賄賂で私腹を肥やしている。将軍は、ハックスリーの賄賂の証拠を持っているジャーナリスト等を消し、証拠を手に入れて上院議員を支配する。

 

 また、絶世の美貌と知性を持った地方ケーブルTVのキャロラインに情報を渡し、ニュースキャスターとして育て始める。彼女を地方局のアンカーマンから全国ネットにニュースキャスターにするのには、偽ニュースの手法を使う。その手先となって動くのもダニーだが、ダニーがキャロラインと割ない仲になってしまったことから計画が綻び始める。

 

 以前「NCISニューオリンズ」を紹介したが、本書の舞台もDCとニューオリンズにまたがる。DVDではわからなかったニューオリンズの蒸し暑さや、沼沢地独特の臭気が綴られる。

 

 <創元ノヴェルズ>が10冊以上翻訳を出版している作者、質の高い暴力的すぎない冒険譚が特徴的です。40年前に読んで、それきりになっている作品もいくつかあります。改めて探してみることにします。