新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

「ロトクラシー」という考え方

 2021年発表の本書は、同志社大学政策学部の吉田徹教授の民主主義体制論。なんと、くじ引きで政策担当者(議員等)を決める「ロトクラシー」という政治手法がテーマだ。

 

 現在多くの民主主義国で行われているのが、代表制民主主義。僕たちは民主主義国対専制主義国という2項対立は現実的ではないと思いながら、「西側」先進国の多くが選挙によって代表を選ぶ民主主義であることは知っている。そして、それらがどこでも閉塞感を生んでいることも知っている。

 

 代表をくじ引きで選ぶという、マンションの理事会かPTAの会長らならともかく、国政を司る代表をくじで選ぶとはと、最初動転した。しかし、いずれにせよ100%正解の制度はないとの前提で読んでみた。

 

        

 

 この方法、古代アテネや中世フィレンツェなどで採用されていたこともあって、決して荒唐無稽ではない。現代でも西ドイツで考案された「計画細胞」という試みは、自治体レベルの環境・エネルギー問題、消費者保護などを市民代表が話し合う場としてくじが使われた。2009年までに70近いトライアルがあったという。

 

 一般市民が(自分事として)政策に参加するという意味で、政策について市民の熟議や市民への諮問や、市民の意見表明が可能となる。常設の諮問委員会の設置も考えられるし、特定の何か(例:原発の是非や気候変動対策)に絞っての議論も可能。これが成り立つ条件は、

 

・代表の属性が偏らない

・十分な情報提供が成される

・市民(代表)による討議が行われる

・議論の透明性と参加者の匿名性のバランス

・出された結論がどう活かされるかが明示されている

 

 だとある。筆者たちは、日本の国政でも参議院を廃止し、くじ引きによる市民院を作って二院制とする提案もしている。確かに選挙に使うエネルギーや正当や利権団体が絡む歪みを考えると、この提案はありかもしれない。

 

 女性議員比率3割を目指し、まだ1割にもなっていないことなどは、次の選挙で達成できるのですからね。