2022年発表の本書は、吉林省生まれで筑波大学の名誉教授遠藤誉氏(中国問題グローバル研究所長)のウクライナ戦争をめぐる大国の関係論。中国習近平主席の視点が強く、いわゆる西側の常識とは異なる主張も少なくない。主張ポイントを時系列的に整理すると、
・米国はずっと「戦争ビジネス」で儲けてきた(から新しい紛争を望んでいた)
・ウクライナをNATOに誘ったのはオバマ政権(のバイデン副大統領)
・バイデンの次男ハンター氏はウクライナから月収5万ドルを得ていた
・一方2021年末、バイデンはプーチンにウクライナ侵攻容認のサインを出した
・親ロシア派を守るためとのロシアの侵攻は、中国には困った事態
・新彊ウイグルのイスラム教徒を守るためと侵攻されることを恐れた
・中国はウクライナとの友好条約(*1)があり、ウクライナが核攻撃されれば(核で)守ってあげないといけない
・ロシアの軍事行動には冷たい中国だが、経済は別。エネルギー輸入などで貿易増
・ロシアがSWIFTから締め出されたのも好都合、中国元ベースの決済CIPSが伸びる
・中国がすぐには台湾侵攻はしない。軍事ではなく経済で米国を凌駕できる2035年まで待つつもり
・盛んに台湾周辺で軍事演習し威嚇するのは、国内の強硬派のガス抜きのため
・新彊ウイグルにはレアアース等の鉱脈があり、太陽光/熱発電の一大産地にすることをもくろんでいる
なうほどこういう見方もあるのかと驚くことも、納得することもあるのだが、核の傘を持たないウクライナに、中国が傘を貸す(!)条約があるとは驚きである。メドベージェフ元大統領が盛んに核の脅しをかけるウクライナ戦線だが、使ってしまえば中露の核戦争になる・・・のだろうか?
筆者は、中立を望んでいたウクライナに対しNATO入りを誘い、戦争の原因を作ったのが米国で、かつロシア侵攻に「米軍は派遣しない」と容認発言をしたことを責めています。さて、バイデン政権はこの疑惑にどう応えるのでしょうか?
*1:2013年習主席とヤヌコービッチ大統領の間で締結されている