新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

ユリとケイの新人時代

 1998年発表の本書は、以前「ダーティペアの大復活」を紹介した高千穂遥のSFシリーズ。WWWAのトラブルコンサルタントである黒髪のぶりっ子ユリと、赤毛のボーイッシュなケイのコンビの物語。本編は唯一の外伝で、コンビの新人時代のエピソードが語られる。

 

 大学卒業時に、銀河連合における紛争解決専門機関WWWAに彼女たちがリクルートされたのは、トラブル解決能力というより2人で触れ合っている時に不定期の発生する予知能力ゆえ。もちろんトラブルの方も得意なのだが、新人時代にすでに3件の事件を解決しているものの、その度に大事件を起こしている。

 

 地道な捜査にじれてくると「うっさい、ざけんじゃないわ」と叫んでブラスターを撃ちまくるからだ。「悪い人はいなくなりましたが、良い人も・・・惑星すら無くなりました」という次第。

 

        

 

 今回のミッションは、惑星アムニールで蠢く<皇帝の息子たち>の退治である。この惑星では独裁政権が倒れたばかりなのだが、独裁者が超兵器を開発していたフシがあり、その行方が分からない。<黄金宮>のそのヒントがあるらしいのだが、それを探りだせというおまけミッションも付いている。

 

 愛用の小型宇宙船(というより戦闘艦)「ラブリーエンジェル」で現地に向かった二人は、さっそく<息子たち>と撃ち合いを始める。周りの迷惑も考えず(表紙にあるような)バズーカをぶっ放して、惑星そのものに多大の損害を与えながら<息子たち>を排除していく。しかし、ついに敵に大軍に追い詰められ・・・。

 

 窮地に陥った彼女たちを救ってくれたのは、惑星の牧場で誕生を待っていた超生物クァールのムギ。ヴァン・ヴォークトの小説に出てくる黒ヒョウの肩に触手を付けたような怪物だ。誕生したばかりのムギは、2人を主人と認めその敵を消滅させる。

 

 あいかわらずのハチャメチャぶりなのですが、ムギがいないダーティペアは面白くありません。ムギの誕生秘話として、嬉しく読みました。