新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

ダルジール警視の多忙な休暇

 1975年発表の本書は、昨年「秘められた感情」を紹介したレジナルド・ヒルの「ダルジール&パスコーもの」。前作「秘められた・・・」で警部に昇進し、プロポーズにも成功したピーター・パスコーとエリーの結婚式で幕が開く。

 

 上司としてスピーチをするダルジールだが、参加者は新郎新婦を持ち上げたり酒を呷るばかりで、ちゃんと聞いてくれるはずもない。むっとなってダルジールは、2週間の休暇旅行に出かけることにする。あてどもなく愛車を走らせた彼は、リンカンシャーの田舎町の湿地帯で車を水没させてしまう。乗せてもらったボートの操縦が悪く、自身もスーツケースも共に水没。

 

        


 地元の未亡人ボニーの家で衣服などを乾かした彼は、しばらくこの大邸宅に逗留することに(パワハラで)した。ボニーは夫の葬儀を終えたばかり。邸宅内にレストランを開業しようとしていた夫は、自ら内装を施している時脚立から落ち、工具のドリルで心臓を貫かれて死んでしまったのだ。

 

 気難しい夫の父親の話など聞いているうちに、ダルジールは表面的には豊かに見えるこの家庭が、金銭的にも困窮し崩壊寸前であることを知る。現地警察に乗り込んで夫の死因を調べてみたが、殺人との確証は持てない。そんな時、この家を調べていた民間保険調査員や、雇っている料理人が死体となって発見される。捜査権はないダルジールだが、ずうずうしく地元警察を指揮して捜査を開始する。その間に、ちゃっかり未亡人とベッドインしたりもする。

 

 このシリーズ、高卒叩き上げ、やや下品な太っちょでパワハラありの離婚経験者ダルジールと、大卒スマート、常識人でユーモアもあるパスコーの対比が面白い。本書では、冒頭の結婚式シーンと最後の50ページにしかパスコー警部が登場しないので、ややその色合いが薄かったのが残念。

 

 でもその分、ダルジールの傲慢・パワハラぶりが際立ちましたね。ブラックユーモア満載で、かつの一篇でした。