新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

現実主義的政権運営の評価は

 本書は2022年1月から2023年6月までの間、朝日新聞(&デジタル)に掲載された岸田政権関連の記事を加筆修正して集大成したもの。衆院補選で3連敗しても怯む様子を見せない岸田総理について、

 

・聞くことは聞くが、進言を受け入れることはない

・現実主義者で拘りがない反面、ビジョンも思想もない

・やりたいことは自らの延命だけ

 

 とメディアが酷評し始めているが、おおむね1年前の時点で本書はこれらと同様の評価を下している。付けたあだ名が「つかみどころのない鵺のような政権」である。政権にとっての危機は多くあった。安倍元総理の国葬を強行、旧統一教会問題、閣僚の不祥事による辞任ドミノ・・・。しかし一方で、広島サミットの成功(*1)、ウクライナ電撃訪問、日韓関係改善、敵基地攻撃能力保有と、外交・安全保障面では成果も挙げてきた。

 

        

 

 防衛費GDP比2%も、異次元の少子化対策も、国会や党内で広く議論することなく(素早く)閣議決定で済ませた手法は、朝日新聞などからは非難の対象となった。この首相をどう評価するか、3人の識者は、

 

・無頓着な宰相 東大御厨名誉教授

・柳のような柔構造 牧原東大先端技術センター教授

・消極的な支持を持つ脱力系 中大中北教授

 

 と述べている。秘書をしていた長男の不祥事や公明党との軋轢もあったが、重要法案はすべて会期内に成立するという手際。これは総理の解散権を十二分に(脅しに)使った成果だとある。現実主義に基づく政権運営だと総理は自負するが、特に何もしたいことがないのではないかとの指摘がある。その場その場で、取り巻きから進言されたことをやっているだけにも見える。

 

 ある意味官僚からすれば、与しやすい政権でしょう。そしてその存続を許しているのは、本書を記したメディアなのかもしれませんね。

 

*1:G7首脳を原爆資料館に案内、核兵器の脅威を明示するなどした