新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

日本人のヘイト意識ゆえの事件

 2022年発表の本書は、いずれもジャーナリストである安田浩一安田菜津紀氏の共著。外国人差別の現場を取材し、日本人のヘイト意識などを問題視したレポートである。やや情緒的に過ぎる部分もあるので、事実と主張点を中心にまとめてみた。

 

 冒頭、名古屋入管局でスリランカ人女性が亡くなった件が取り上げられ(昨日紹介した)入管法に基づく難民申請者の扱いについて非難している。入管施設は事実上の牢獄で、いつ出られるかもわからず、医療さえも十分受けられない。これまでに17人が亡くなり、うち5人は自殺だとある。難民申請が受理されるのが1%に満たない中で、ウクライナ紛争で日本に避難してくる人たちには、破格の待遇があると批判している。もちろん、日本政府は彼らを「避難民」として、難民とは区別している。

 

        

 

 技能実習制度についても、職場は「労働基準法違反のデパート」だとして、搾取・パワハラ・セクハラ・暴力行為などの温床と紹介している。

 

・職場自身は、時給400円ほどと安い労働力に頼らないと維持できない

・実習生も、ブローカーに多額の紹介料を払っているのでおいそれと帰れない

 

 在留資格の関係(*1)で、転職も異動も不可能で、搾取され放題である。

 

 加えてメディアや政治家等が「外国人=犯罪者」との印象操作をしていると、筆者らは言う。実習生などを苦しめ、犯罪に追いやっているのではないかとも。政治家・識者らの発言がいくつも引用されているが、その根底には外国人に対する差別意識が(日本人に)あるからだとの主張。

 

 「不法滞在者」という表現は「非正規滞在者」とすべきだとあるのだが、そのようなレトリックで解決する問題ではないように思う。武蔵野市で外国人に(意見表明の)投票権を与える条例が否決されたのは残念と、逆風の強さに危機感を募らせる。

 

 この時点では難民申請中にも退去強制できるようにする入管法改悪(!)を阻止できたと胸をなでおろす筆者らだが、それはできてしまいました。さて、どうなることでしょうか?

 

*1:1在留1資格が原則