本書は、安倍元総理暗殺事件の直前に4人の識者(*1)が集まって、官邸主導の道筋・残る課題などを議論したもの。対談は2022年7月に行われ、翌年出版されている。民主党政権での3・11危機管理から、第二次安倍政権の安全保障政策推進、官邸強化の経緯や内在する課題、財政問題、メディアの在り方などが生々しく語られ、現在進行形の危機管理施策も示されている。
第二次安倍政権の何が良かったかというと、安倍総理・麻生副総理がいずれも総理経験者だったこと。国のかじ取りの責任・権限は重く、当初は戸惑ってしまう。その洗礼は受けていた2人なので、スタートが早かった。安倍政権は、
1)危機管理(強化)
2)デフレ脱却
3)憲法改正
のプライオリティを考えていた。持論である憲法改正は、前2項をして国民の信頼が高まれば自ずとなるということ。
内閣人事局の設立で、各府省から適材適所の配置ができるようになったものの、従来になかった役割(例:デジタル監)が出て来て、官僚だけではニーズを満たせない。官邸の意志を示そうにも、厚労省など官邸から遠い省庁もあってその溝はまだ深い。ほかにも多くの課題が残る。
・内閣府にサイバーセキュリティ局が必要
・情報管理のためのセキュリティ・クリアランス制度がない
・サイバーを含む防衛、安全保障関係の人材育成機関がない
などの意見が出ているが、現時点ではいずれも改善の方向で動いているから、彼らが何らかの働きかけをしたものと思われる。
面白かったのは、欧米ではインテリジェンス機関がTOPに近いが、日本では「御庭番」と呼ばれて室内に入れない低い身分であることが、日本政府に諜報機関が出来ない理由だとあること。
政府は有事には「埴輪が大魔神になるように」強権を振るう必要が出てくるとあります。緊急事態条項のことですが、一部野党やメディアの反対があっても、普通の国になる努力はして欲しいと思います。
*1:兼原信克(元外政担当内閣官房副長官補)佐々木豊成(同内政担当)高見澤將林(同安全保障担当)曽我豪(朝日新聞編集委員)