新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

資本主義も限界、どうすべきか?

 2023年発表の本書は、すでに10冊ほど紹介しているジャーナリスト大野和基氏が世界の知性にインタビューするシリーズ。今回のテーマは資本主義。欧米の学者8名がインタビューに応じていて、環境・経済・倫理・金融などの専門性から新本主義はどうすべきかを論じている。

 

 一致しているのは、共産主義は過去のもので失敗事例となって、復活することはないということ。現在共産主義と名乗っているものも、実際は社会主義だったり形を変えた資本主義だという。

 

        

 

 社会の不平等を研究するブランコ・ミラノビッチ氏は、2つの資本主義の形があるという。一つはリベラル能力資本主義で、米国が典型例。能力の高い者が、富の大半を奪ってしまう。彼らはそのカネで政治を買い、自らの立場を護ろうとする。もう一つは政治的資本主義で、中国がその例。政治スキームの中で資本主義経済が回る。この形の問題点は、カネを得るために政治力が必要で、結果は汚職だらけになること。

 

 いずれにせよ政治と経済の結びつきが強く、社会の不平等は増す。UCLA地理学教授ジャレド・ダイアモンド氏は、飛躍的な技術発展が健全な資本主義を破壊したという。本来格差を是正するのが民主主義の役割だが、今はステークホルダー資本主義が格差を広げ、民主主義すら壊そうとしている。

 

 また環境問題を取り上げる何人かの研究者は、地球を守りながら経済を回すために必要なことを4つ挙げている。

 

・テクノロジーの進歩(より少ない資源で大きな効果)

・資本主義(強欲ではなく企業間の健全な協力でESG推進)

・反応する政府(具体的に迅速に、十分な説明責任を果たすこと)

・市民の自覚(分断ではなく、課題解決に向け団結すること)

 

 政府については、トランプ政権と逆のことをすればいいとある。テクノロジーが社会を壊したとする意見の一方、テクノロジーは「脱物質化」を進めて環境問題に寄与するとの意見もある。

 

 総じての結論は「資本主義の改革で、気候変動は止められる」なのですが、この改革はとても難しいですよね。だから学者が取り組む意味がある(終わらない・・・)のかも?