新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

Hobby Japan Games

 かつて隆盛を誇ったアメリカのゲームメーカー「アバロンヒル」のゲームを4つばかり紹介した。一時期、各社の物を合計80は持っていたように思う。(数えたことがない) ゲームはもちろん関連誌の評を参考にして買うのだが、本当のところは買って、フタを開けて、ルールを読んで、マップを広げて、コマを切って並べてみるまでわからない。一度もまともにプレイすることなくお蔵入りになったものも半分くらいはあったような気がする。(これも数えてみるわけがない、数えても滅入るだけだ)

 
 転居も多かったのでその際に使わないものを処分して徐々に減り、今は10ほどに減ってしまったが厳選された精鋭たちともいえる。今回は、アバロンヒルの輸入代理店をしていたホビー・ジャパンがオリジナルで出したゲームである。同社は、プラモデルやミニカー、モデルガン、各種玩具、テーブルゲームなどを手掛けていた。1970年代アメリカではやり出したシミュレーション・ゲームの輸入で、国内ゲーム市場の拡大におおきく寄与した。

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 やがて輸入だけではなくオリジナルゲームをいくつか出した。その中で、今でも僕が持っているのがこれ。英語名で"Pacific Fleet"(太平洋艦隊)、箱にニミッツ提督が書かれているように、アメリカ太平洋艦隊の視点から見た太平洋戦争ゲームである。日本オリジナルなのになぜアメリカ視点かというと、日本人デザイナーがこのテーマに取り組んでいろいろやってみたものの、史実以上に日本が優位に立てる可能性がないことに気付いたからである。
 
 以前にも書いたが、国力・技術力・資源・人材などどれをとっても日本側に勝ち目はなかった。米軍がドジを踏み続けても、史実の降服を半年伸ばせれば御の字だったように思う。最初は「架空戦記」を書くつもりでいろいろやってみたデザイナーたちもついにあきらめ、「米軍が暴れる日本軍をいかに手際よく片付けるか」に視点を変えた。だからNGゲームというわけでは、もちろんない。主要な航空母艦・戦艦は1艦1コマだし、マップもセイロン島からハワイ、オーストラリアまで広がっている。
 
 初期の戦力は日本軍やや有利なくらいで、最初のフェイズで奇襲が成功し英米軍は半減してしまう。約1年は日本がイニシャティブをとって、ビルマシンガポールインドネシア・フィリピン・ニューキニア・グアムなど太平洋を席捲できる。しかし、英米軍の増援が半端ではない。日本軍が1隻の空母と1個航空戦隊を受け取る間に、4隻の空母・2隻の戦艦・10個航空戦隊がやってくる。
 
 結局日本軍プレーヤーは、中国大陸や満州国から陸上戦力を引き抜き太平洋の島にバラ撒いて守らせるしかない。初期のころには役に立った基地航空隊もウンカのごとき米軍航空隊に蹴散らされてしまうので、ペリリュー島硫黄島のように、洞窟に立てこもって時間稼ぎするが精一杯。ちなみに洞窟陣地ルールはない。
 
 かなり複雑なゲームで、難易度は8~9。開戦から降服(僕は終戦とは言いません)までやり抜いたことは一度もなく、大体1943年初頭で力尽きますよ。