新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

第二次太平洋戦争(後編)

 ハワイを占領し西太平洋全てを手中にした中露同盟に対して、有力な戦闘部隊のほとんどを失った米軍に味方するのはイギリスとオーストラリアなど旧英連邦の国だけになってしまう。ドイツなど欧州大陸諸国は中立を保っているとあるが、朝鮮半島はもとより日本の動静は全く書かれていないのは解せない。「ロケットマン」はどうなったのだろうか?日本軍(憲法改正できたのでしょうかね?)は無視できない戦力をもっているはずだが?

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 反撃手段をほとんど持たない米軍だが、ハワイでゲリラ戦を行う軍人も残っていた。オアフ島の北エリア、サーフィンで有名なノースショアを拠点にする「ノースショア・ムジャヒディン」である。海兵隊のドイル少佐が率い、中国軍に対して「聖戦」を仕掛けている。このあたりの設定、冗談が過ぎるようにも思う。
 
 彼らが時間を稼いでいる間に、米軍は反撃の準備をする。中国の宇宙ステーションに殴り込み部隊を送り、予備役に編入されていたミサイル駆逐艦「ズムウォルト」を改修してゴースト・フリートの旗艦にする。現在初期不良を起こしてサンディエゴで修理中の新鋭駆逐艦「ズムウォルト」は、本書では旧式の軍艦に分類されている。
 
 旧式ゆえにマルウェアを仕込んだ部品などは使っておらず、中国軍のサイバー攻撃に耐えるのだ。上巻の表紙には、ダイヤモンドヘッドを背景に電磁砲を撃つ「ズムウォルト」の雄姿が描かれている。下巻の表紙は中国軍機の追撃をかわす、旧式のF-15戦闘機だが、F-15のプログラムコードの行数はF-35より2,000万行も少ないと、本書にある。
 
 巻末の解説では現在のトム・クランシーと褒めているが、僕にはちょっと疑問が残る。確かにドローンと戦う海兵隊員のシーンや、ズムウォルトに乗り込む老練の技術者(人間も旧式が採用されている)の活躍などみどころはある。サイバー攻撃の知見などを与えてもくれる。しかしコンピューターの内部の話に比べて、国際情勢や戦略的な視点が貧弱だ。トム・クランシーやラリー・ボンドの再来とは・・・言い過ぎでしょう。少々悪ふざけが過ぎた「警鐘SF」だと思いますね。