パナマ運河の拡張工事が終了して2年になる。報道によれば、コンテナ積載量5,000個までの船舶しか通行できなかったが、今後は13,000個積載船舶も通行可能となるという。もう少し詳しく見てみると、通行できる船舶のサイズは、全長:294m、全幅:32.3m、喫水:12m以下に制限されていたが、拡張工事完成後は、それぞれ最大366m、49m、15mまでの船舶航行が可能になっている。
この運河は大西洋と太平洋を、マゼラン海峡を通ることなく、より直接的に結ぶ大動脈である。マゼラン海峡は南極圏に近く暴風が吹き荒れる難所として知られている。ずいぶん便利になったのだろうなと思うが、ここでは80年前の話をしたい。
米国との戦争を覚悟した帝国海軍が、新戦艦に期待したのは当然米国の戦艦・新戦艦を撃破することだった。いわば、日本海海戦の再現である。しかし、米国との経済格差は大きく同じ数の戦艦を保有することはできない。ならば、量より質だということで、より強力な戦艦を持とうとするのは自然な流れだった。
より強力な戦艦、それはより威力のある主砲を備えている戦艦ということである。当時最大の主砲口径は長門級(日本)・コロラド級(米国)・ネルソン級(英国)合計7隻が持つ40cmだった。そこで、46cm主砲を積もうということになった。
しかし、米国も46cm砲戦艦を持てば同じではないかと思われるだろうが、そうはいかない事情が米国海軍にはあった。それがパナマ運河である。米国海軍は東海岸と西海岸に分散配備されることになるが、その相互運用のためにはパナマ運河を利用せざるを得ない。したがって、新戦艦にも全長:294m、全幅:32.3m、喫水:12m以下とサイズ制限が求められる。