何度か第二次世界大戦前後の航空機開発事情や、マイナーな航空機を特集した本を紹介している。今回は日本の戦闘機に絞って、しかも試作のみに終わるなどして空で戦うことができなかった機体を紹介したい。
制空権なきものは必ず敗れるわけで、制空の主役は戦闘機である。その空域に投入できる戦闘機の質×量によって、制空権はどちらの陣営に傾くかが分かる。艦載できるものか否かを除けば戦闘機に明確な種別はないが、得意とする闘い方によって、
・軽戦闘機 旋回性能が良く格闘戦に強い。
・重戦闘機 速度性能に優れ一撃離脱を得意とする。
がある。その中間で「中戦」というのもまれにはあった。陸軍三式戦「飛燕」はその代表格である。大戦中に軽戦から重戦への流れが出て、本書に紹介されている機種のほとんどは「重戦闘機」である。いくつか見ていこう。
◆17試艦戦「烈風」 重量4,720kg、速度629km/h、兵装20mm機銃4門
架空戦記によく出てくる戦闘機で、実際には試作機が完成しただけで敗戦を迎えた。2,000馬力級エンジンの開発に難航した上に、艦載機でしかも旋回性能も求められ「艦攻」のように大きな機体になってしまった。
◆キ109試作特殊防空戦闘機 重量10,800kg、速度550km/h、兵装75mm砲・12.7mm機銃
B29などの大型の爆撃機を撃墜するために、試作された機体のひとつ。1トン近い75mm高射砲を機首に装備していた。実際にB29迎撃に向かったこともあるが、高々度で来襲する敵機を撃破できたという記録はない。
◆キ88試作局地戦闘機 重量3,900kg、速度600km/h、兵装37mm砲・20mm機銃2門
米軍のP39エアラコブラに似た機体。ドイツから導入した液冷エンジン搭載でエンジンの中心軸内に37mm砲を装備している。大型機の迎撃も期待できたが、残念ながら登場時期が遅すぎ、試作機組み立て開始直前に開発中止が決まった。
◆試作特殊攻撃/戦闘機「橘花」 重量3,550kg、速度677km/h、兵装30mm砲2門
ジェットエンジン2基を積んだMe262によく似た機体。表紙にあるのは本機で、やはり架空戦記には頻繁に登場する。敗戦直前に初飛行しているが、実戦に出られる状況ではなかった。
ほかにもロケット局地戦闘機「秋水」などがありますが、開発技術は戦後の日本経済発展に寄与したことは評価したいですね。